[内容]
一人で祖母の介護を担うことになった、30代前半独身男性の介護奮闘記。
副題『アラサー男性、とことん在宅介護で学んだこと』
[感想]
著者は放送・通信業界で営業職をしていたが、介護生活になってからはwebで
の情報発信を皮切りに、ライターとして活躍。現在は介護をテーマに講演も行
っている。
著者が32才の時に祖母が認知症を発症し、ほぼ同時に母親が脳梗塞で手術入院。
「3人兄弟の中で自分だけが独身」「経済的な事情」「子供の頃は祖母が自分の
母親代わりだった」などで、やむを得ず自分が会社を辞めて介護することを決断。
その後在宅介護を6年、施設介護を2年、計8年の介護生活となる。
介護は先が見えない。しかも症状は日々進んでいき、想定外の事も起きる。
著者にとっては何もかもが初めての事で辟易することもあったろうに、祖母を思
いやる心は一貫していて、そこも凄いなと思った。
下記はそんな中で吐露された著者の思いだが、30代の男性としては当然だろう。
「普通に仕事をしたい。遊びにも行きたい。結婚もしたい。」
「家事や排泄などの世話以上に大変なのは、同じ話を聞き続けることだった。」
介護3年目のある日、祖母が転倒で2週間入院。要介護度が2から4に上がった。
症状はだんだんと進行していき、トイレや箸の持ち方が分からなくなる、衣服を
散乱させたり、電源コードをかじったり、夜中に家の周りをウロウロしたり…。
他にも色々書かれているが、よく投げ出さなかったものだと思う。
老健施設に入所した時にトラブルが起きた。入院するか家でみるかの二択だと言
われて、結局入院することに。
この時の入院先が“精神科”だったことには私も驚いたが、この病院の医師とス
タッフが素晴らしくて、祖母は少しずつ心身が回復。著者は週に1度面会に行く
生活となる。
本書には介護での気付きが幾つか述べられているが、その中から3つ抜粋。
◎本人に構い過ぎないこと。極力日常生活に近い生活にしないと、衰弱が進む。
◎身内が病気になる前から、お金の事・誰が面倒をみるのかを話し合っておき、
いざ介護となった時にすぐ協力体制がとれる関係性を築いておくことが大切。
◎よく見られる認知症の症状、「食べたことを忘れる」「お金を盗まれたと言い
出す」「汚れた下着を隠す」等の対処として共通しているのは、叱るのは逆効
果ということ。
この他、介護認定を受ける時のポイント、介護サービスの費用等、実用的なアド
バイスも多数。最終章では、新型コロナウィルスなど感染症全般について対処の
方法が解説されている。