ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

(読書感想)『ウクライナ戦争と米中対立』峯村健司

[内容]

著者と5人の有識者による対談集で、ロシアのウクライナ侵攻と中国による

台湾有事を中心に解説。 『副題』帝国主義に逆襲される世界

[感想]

著者はジャーナリストで、青山学院大学客員教授、日本防衛学会会員。

 

専門家達による情報と未来予測を読み、改めてウクライナ侵攻と台湾有事は

対岸の火事ではないことを強く感じた。 以下に本書の一部を要約。

 

ウクライナ侵攻について]

プーチン大統領は、ロシアの安全保障上NATOの東方拡大を容認できないと考え

ており、ロシア帝国の復活を掲げて侵攻を正当化。

しかしバイデン大統領が早い段階から「軍事介入はしない」と明言したことで、

プーチンを増長させてしまった。…というのが大方の意見だ。

 

この侵攻はハイブリッド戦争で、防衛するウクライナに対して、ロシア側のモラ

ルの無い野蛮さが際立っているのが特徴だという。

 

ドイツを始めEUは、天然資源の多くをロシアに大きく依存してきた。又ロシア

核兵器を持つ大国であることから、この戦争を経済制裁で止めることは出来な

いと考える人は多い。

先月起きた“ワグネルの反乱”は、ロシアのみならず世界中に大きな衝撃を与

 え、その後もプーチン政権に混迷をもたらす様々な出来事が続いている。

 

 [台湾有事について]

台湾有事の時期に関しては ウクライナ侵攻によって かなり先延ばしになっ

た むしろ早まる…など、対談者によって意見が異なっている。

 

ウクライナへの武器支援により、現在台湾への武器支援が滞っている状態だそう

で、更にモンゴル、チベットウイグルなどが侵略・併合された歴史を見るに、

中国が台湾を諦めることは有り得ない…というのが共通した見解だ。

 

[中露及び世界について]

中国は “グローバル・サウス”をかなり取り込んでいて、民主主義国は人口

べースでは既にマイノリティだという。

 

中露にアフリカ諸国などを加えた国々と、西側諸国との分断が深まる可能性が高

いと予測する人は多く、世界的に軍拡が進んでいる

日本も今年度の防衛費予算を大幅に増額して議論を呼んでいる。

 

「国連は主権国家の集まりであって、世界政府ではない。」…国連には何の力も

無いと言われるが、これでは紛争国が勧告を無視するのは当然か…。

 

 [日本について] (本書から一部を抜粋)

「自衛能力が無いと、同盟国がただ頼ってもアメリカは助けてくれないだろう。」

「台湾有事に、反米中国寄りの発言をする人たちと戦えるか。」

「コスト一辺倒で中国に関わって来た日本企業。2022年5月に成立した“経済安

全保障推進法”の成否は企業の自覚次第である。」

 

この他にも、アメリカからミサイルを買えるか、防衛費を増やせるか、戦わなけれ

ばいけなくなった時は?…等、多岐にわたる議論が繰り広げられている。

 

著者は最後にこう書いている。

「日本は大国として踏みとどまることが出来るのか。小国となって大国に蹂躙され

る道をたどるのか。正にその岐路に立っている。」