[内容]
著者と5人の有識者による対談集で、ロシアのウクライナ侵攻と中国による
台湾有事を中心に解説。 『副題』帝国主義に逆襲される世界
[感想]
著者はジャーナリストで、青山学院大学客員教授、日本防衛学会会員。
専門家達による情報と未来予測を読み、改めてウクライナ侵攻と台湾有事は
対岸の火事ではないことを強く感じた。 以下に本書の一部を要約。
[ウクライナ侵攻について]
プーチン大統領は、ロシアの安全保障上NATOの東方拡大を容認できないと考え
ており、ロシア帝国の復活を掲げて侵攻を正当化。
しかしバイデン大統領が早い段階から「軍事介入はしない」と明言したことで、
プーチンを増長させてしまった。…というのが大方の意見だ。
この侵攻はハイブリッド戦争で、防衛するウクライナに対して、ロシア側のモラ
ルの無い野蛮さが際立っているのが特徴だという。
ドイツを始めEUは、天然資源の多くをロシアに大きく依存してきた。又ロシア
は核兵器を持つ大国であることから、この戦争を経済制裁で止めることは出来な
いと考える人は多い。
※先月起きた“ワグネルの反乱”は、ロシアのみならず世界中に大きな衝撃を与
え、その後もプーチン政権に混迷をもたらす様々な出来事が続いている。
[台湾有事について]
台湾有事の時期に関しては ウクライナ侵攻によって ①かなり先延ばしになっ
た ②むしろ早まる…など、対談者によって意見が異なっている。
ウクライナへの武器支援により、現在台湾への武器支援が滞っている状態だそう
で、更にモンゴル、チベット、ウイグルなどが侵略・併合された歴史を見るに、
中国が台湾を諦めることは有り得ない…というのが共通した見解だ。
[中露及び世界について]
中国は “グローバル・サウス”をかなり取り込んでいて、民主主義国は人口
べースでは既にマイノリティだという。
中露にアフリカ諸国などを加えた国々と、西側諸国との分断が深まる可能性が高
いと予測する人は多く、世界的に軍拡が進んでいる
※日本も今年度の防衛費予算を大幅に増額して議論を呼んでいる。
「国連は主権国家の集まりであって、世界政府ではない。」…国連には何の力も
無いと言われるが、これでは紛争国が勧告を無視するのは当然か…。
[日本について] (本書から一部を抜粋)
「自衛能力が無いと、同盟国がただ頼ってもアメリカは助けてくれないだろう。」
「台湾有事に、反米中国寄りの発言をする人たちと戦えるか。」
「コスト一辺倒で中国に関わって来た日本企業。2022年5月に成立した“経済安
全保障推進法”の成否は企業の自覚次第である。」
この他にも、アメリカからミサイルを買えるか、防衛費を増やせるか、戦わなけれ
ばいけなくなった時は?…等、多岐にわたる議論が繰り広げられている。
著者は最後にこう書いている。
「日本は大国として踏みとどまることが出来るのか。小国となって大国に蹂躙され
る道をたどるのか。正にその岐路に立っている。」