ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

病んだ家族、散乱した室内 (春日武彦) 医学書院 

[内容]

精神科医による、精神病患者の援助者としての心構えと、実践の為の指導書。

副題は『援助者にとっての不全感と困惑について』

[感想]

精神分裂病(統合失調症)を始め、依存症、ウツ、痴呆といった脳や心の病に

関する説明と、経験に基づいた指導が具体的で、私のように患者と直に接す

ることが殆ど無い人間にも、教えられることが多かった。

 

「気まぐれな親切心だとか、チープな感傷、腹の据わらぬ使命感、見せかけだ

けの論理的整合性、盲目的なマニュアル信奉に支配された人々が、決して真

の専門家とはなれない理由もそこにある。」 

建前や原則は一切排除して書いたと言う通り、このように歯に衣着せぬ言葉が

多いが、これは様々な分野に言えることで、頷いている人は多いかも知れない。

 

次も厳しい意見だが、現実を見てきた人ならではの率直な思いなのだろう。

(患者が子供を持つ事に関して) 「甘っちょろく無鉄砲な判断は困る。病人とし

て援助を受ける権利があると同時に、ハンディを負わざるを得ない現実にも目

を向け-(略)。」

 

病気そのものよりも、家族関係が問題になることも多いそうで、家庭内で抱え込

むことと、使命感だけで対処することの間違いを指摘。

可能な限り納得のいく手を打ち、心のゆとりを持つことが、予想以上に効果的で

問題解決への第一歩を踏み出すことになるという。

 

著者が医師として訪問する家庭には、例えばゴミ屋敷だったりなど、環境の問題

も多いそうで、本書は2001年の出版だが、訪問介護の仕事をしている知人によると

今も状況はさほど変わらないらしく、一筋縄ではいかない難しさがあるようだ。