[内容]
シエラレオネで、MSFスタッフとして働いた日本人医師の活動の記録。
[感想]
本書は2002年の初版本に加筆修正して、2012年に出版されたもの。
冒頭で著者は「国際協力の現場の実情」と「本当に意味のある国際協力とは
何か?」を書いたと言っている。本書にはMSFのホームページや、ニュース
レターでは知り得ない話が沢山あり、読みながら患者やスタッフとのやり取り
に驚いたり、失敗談にクスッと笑ったり。外国人同僚との話も興味深かった。
シエラレオネはアフリカにあり、1991年からの10年間ダイヤモンド鉱山の
利権を巡って内戦が続いた。多くの市民が犠牲になり、あらゆる経済インフラ
が破壊され、著者が現地に来た時は、医師が医者の仕事を(殆ど)しないことに
驚いたという。(医師の多くは、保健所の長官などの役職に就いている。)
2002年当時の平均寿命は34歳。2018年現在は54歳まで上がっているが、
HIVとエボラ出血熱の影響もあって、今も下位10か国以内に入っている。
MSFは医療の提供のみなので、難民から「薬はいらないから、食べ物と水を
くれ。」と言われることがあるそうだ。実際「極論を言えば、食事さえとって
いれば50%くらいの確率で、病気は勝手に治る可能性がある。」…とか。
考えさせられる文章が幾つもあった。その中から2つだけ。
「国連は基本的に政府寄りなので、彼らと共同の活動はなるべく行わない。」
「ピース・コロナイゼ-ション(人道主義の皮をかぶった文化的侵略行為)…我々
は同じ轍を踏んではいけない。」
著者の一番の功績は、現地で何人もの医療スタッフを育て、医療のシステムを残
したことかもしれない。 2020年現在、この国の治安は割と安定しているという。