[内容]
大凶作のために住み慣れた土地を追われ、安住の地と仕事を求めて旅立った
農民達の物語。 (1940年 製作国アメリカ) 映画賞受賞
[感想]
時代は1930年代半ばで、映像はモノクロ。題名の“怒りの葡萄”は聖書からの
引用で、神の怒りによって踏み潰される人間達のこと。
殺人罪で投獄されていたトムが、仮釈放により故郷のオクラホマに戻ってきた。
しかし小作農で生計を立てていた家族は、大砂塵による凶作と大型農具の導入
により地主からお払い箱にされていて、住んでいた家も強制的に壊されてしまう。
一家は家財道具を売ってポンコツのトラックを買い、たまたま手に取った1枚の
募集チラシを頼りに、一族と共に何日もかけてカリフォルニアを目指した。旅は
過酷で、途中で死ぬ老人や逃亡する者が続出し、トムの家からも死者が出た。
しかし、やっと辿り着いた目的地は労働力過剰状態で、掘っ建て小屋で暮らす同
じような農民であふれていた。明日をも知れぬ極貧に、権力者の横暴と搾取。
いつも飢えてる子供達と、体力が無くて死んでいく老人達。
ある日 知人の元説教師が、他の労働者と共にストを計画したために、地主に雇わ
れた男に殺され、現場に居合わせたトムはその男を殺してしまう。
一家はトムを匿ってその夜のうちに農場を出、国営キャンプに辿り着いて
いっ時平安な暮らしを満喫するが、結局トムとは別れ、短期の仕事があるという
情報に再起をかけて新しい土地に向かう。この時の母親の言葉が前向きで力強い。
それにしても、大変な時代とはいえ善良な筈の市民達から暴力的に追われるなど、
“持てる者”の横暴と冷たさに、人間とはこんなものなのかと驚かされることの多い
映画だった。