15年程前のこと。テツは近所に出没するようになった雄猫(7歳くらい)で、
私は同じ班の奥さんに相談されるまで、そんな猫がいることには全く気付
かずにいた。
近所の老人が「あいつはこの辺のボス猫で…云々。」と小憎らしげに言って
いたが、見た目より弱くてこの老人の飼猫から逃げ回っていた。近くで見る
と思ったより痩せていたこともあり、すぐ保護することに。
まずは餌付けから始めたが、とにかく用心深くて捕獲機には全く近付かない。
10日が過ぎ、近所の猫嫌いの男性が気付いたことで、相談してきた奥さんは
後ずさりを始め 、私も少し焦りを感じ始めたある日のこと。
夜中の1時頃に、2匹の猫が喧嘩する凄い鳴き声で目が覚めた。
この辺りには夜になると猫を外に出す家が何軒かあり、私はテツがやられる
かもしれないと、パジャマのまま外に飛び出した。しかし外は経験したことの
ない凄い濃霧で、辛うじてお向かいと隣の家が見えるだけ。
足元がおぼつかない感じで、20mも歩いただろうか。目の前に現れた2匹は
明らかに飼猫だったので一安心。猫達は私の姿を見て一目散に逃げて行った。
家に戻って布団に入ってから、変な人がいなくて良かった…と思ったが、夜中
にパジャマでうろつく私の方が、余程怪しかったかも(笑)。
テツは、長男の「捕獲機じゃなくて、犬のケージに餌を置いてみたら?」の
アドバイス通りにしたら数日後にはあっさり捕まり、その後はよその飼い猫と
なって、人嫌いは相変わらずだが1人にだけ懐いて生きた。