[内容]
遺品整理代行業者が、現場での体験を綴っている。
副題は「天国へのお引越しのお手伝い」
[感想]
少し軽い調子の題名だが、内容は至って真面目で、著者がどんな状況でも
死者と遺族を思いやって仕事する様子に好感が持てた。
全部で34話あり、巻末に『死体は語る』の上野正彦氏との対談がある。
著者は2002年に、日本初の遺品整理専門会社を設立した人。
「この仕事をしてると、世の中には信じられないくらい悲惨な生活を強いら
れてる方がいかに多いかがよく分かります。」この言葉通り本書からは孤独死
した人、自殺した人などの驚くような人生が見えてくる。
ゴミが山積みになった自室で酔っ払って、ゴミにのみ込まれて窒息した人。
悪徳セールスマンに、必要の無いものを沢山買わされていた老人。
介護していた夫が失踪し、台所で力尽きた姿で発見された妻。
介護をめぐって追い詰められた末に起きた殺人や心中。
孤独死の現場では、本当に多くの人が「あの人がまさか」と言うそうだ。
独居老人が孤独死しない為に大切なのはやはり人間関係で、まずは本人が
“孤独死したくない”と思うことだという。当然周りの気遣いも必要だ。
高齢者の孤独死現場でペットが餓死してることはとても多いそうで、著者は
「ペットを飼うのであれば人間との関係も大切にしてほしい。」と言う。
「人は最後の最後まで生き続けるべきである。(略)でも、本当にそうなのだろ
うかと、沢山の悲惨な人生の終焉を目にしてきた私はそう思わざるを得ません。」
前書きに書かれていたこの言葉、私も本書を読み終えた時に考え込んでしまった。
身内の自死は、多くの遺族に精神的障害を残してしまうそうで、本書では