[内容]
タックス・ヘイブンを実例と共に解説し、パナマ文書は誰が何の為に公開し
たのかを考察。
[感想]
パナマ文書とは、パナマの法律事務所によって作成された一連の機密文書の
ことで、タックス・ヘイブンを利用する企業・個人の取引が記録されている。
タックス・ヘイブンは「租税回避地」という意味だそうで、本書は次の5つに
分けて解説が進む。 「タックス・ヘイブンとは何か」「世界的な事件と陰謀」
「社会主義とタックス・ヘイブン」 「パナマ文書公開までの隠された真実」
そして最後は、パナマ文書に記載されていた日本法人、役員、仲介者の17頁に
及ぶ一覧表だ。(通名の人や外国籍の企業などは、載っていない。) もし他の
法律事務所の情報も開示されたら、世界中で一体どれだけの数になるのだろう。
パナバ文書には、習近平を始め社会主義国の政治家やその親族の名前もズラリ
と並んでいるそうで、これには仰天した。又この文書の公開により、アイスラ
ンドの首相を始め、世界のトップクラスの政治家が何人も辞任している。
(米関係の名前が少ないのは、パナマを利用しなくても国内で出来るからだとか。)
著者はマイカル社(総合小売業)の社員時代に、タックス・ヘイブンと直接関わり
を持っており、当事者としての体験も興味深く読んだ。
後半は、この機密文書を南ドイツ新聞に持ち込んだ情報提供者の狙いについて
の考察で、テロとの関係、米・独・仏の立ち位置など、政治の裏側にも言及。
タックス・ヘイブンの一番の目的は“財産の保全と節税”で、それは同時に
「資産隠し」「脱税」「粉飾決算」「マネーロンダリング」につながること。
2016年にG20が、タックス・ヘイブンを使った課税逃れを防ぐための共同声明
を採択。改善しない国に対しては対抗措置が検討されるそうだ。