実家のお墓は海に面した小山にあり、片面に300基以上の墓石が並んでいる。
そこは昔からの墓地で、くすんだ白木の墓標もチラホラ見られた。
その墓地の真ん中に、お寺のお堂と住職一家の住まいが建っていた。
中学生の私が、母と2人でお墓参りに行った時のことだ。
読経が終わって住職と話をしていた母が、真面目な顔で「幽霊を見ることは
ありますか?」と聞いた。
住職は少し間をおいてから、やはり真面目な顔で「あります。」と答え、
「気持ちのいいもんじゃないですけどね。」と笑った。
母は何故そんなことを聞いたのだろう?
私が成人する頃に、母がこんな話をしたことがある。
「茶の間から玄関の方を見たら、(道外の)伯父の姿が見えて、ビックリして目
を凝らしたら、スーッと消えてしまった。それから何日か後に伯父が亡くなっ
たという電話がきた。」
私は「ふ~ん」と聞き流してしまったが、多分母は他にも色々体験していたの
だと思う。母が元気な内に、ちゃんと聞いておかなかったのが残念だ。
このような虫の知らせや霊感は、遺伝すると言う人と全く関係が無いと言う人
がいる。母についてはこれしか知らないが、血は無関係ではないのかもしれない。
霊感がある人の多くは、小さい時から色々な体験をしているようだが、
私が自分のそれに気付いたのは、40歳の頃だった。