ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

<絵本> 花さき山 (斉藤隆介) 岩崎書店

[内容]

村人たちの優しい心から生まれた、沢山の花の物語。 文化賞受賞。

[感想]

50年前に出版されたロングセラー絵本で、辛くとも自ら進んで犠牲になる

行為の尊さが描かれている。 滝平二郎の切り絵が独特で、力強い。

 

山奥に迷いこんだ少女が、幻の老婆「山ンば」に出会った。山ンばは噂と

違って優しく、少女の名前も、この山に迷いこんだ訳も知っていた。

 

少女が山一面に咲く美しい花に驚いていると、「この花は、ふもとの村の

にんげんが、やさしいことを ひとつすると ひとつ さく。」と教えてくれた。

 

妹のために、自分は着物を買ってもらうのを我慢した少女。

授乳の順番を双子の弟に譲って、その様子を涙を浮かべて見つめる男の子。 

命がけで村を救った男の死によって出来た山の話。

 

著者が後書きに書いている。「みんなの為にささげることこそが、自分を更に

最高に生かすことだ。」

 

この絵本の子供達を見ていたら、感心するより切なくなった。

それは、彼らが健気だということもあるが 「いつも優先されてた子が小さな

暴君になった」「我慢ばかりしてきた人と家族の間に溝が出来た」という話を、

実際にいくつか見聞きしたのを思い出したからだ。

 

子供に、思いやりや譲る心、我慢することを教えるのは大事だ。著者の

言わんとするところも、理解している。 

だが、“いつも”自ら進んで犠牲になるのはいけない。何かを決める時は「誰か

を犠牲にすることなく解決する方法はないか」と、皆で考えるようにしたい。