[内容]
村人たちの優しい心から生まれた、沢山の花の物語。 文化賞受賞。
[感想]
50年前に出版されたロングセラー絵本で、辛くとも自ら進んで犠牲になる
行為の尊さが描かれている。 滝平二郎の切り絵が独特で、力強い。
山奥に迷いこんだ少女が、幻の老婆「山ンば」に出会った。山ンばは噂と
違って優しく、少女の名前も、この山に迷いこんだ訳も知っていた。
少女が山一面に咲く美しい花に驚いていると、「この花は、ふもとの村の
にんげんが、やさしいことを ひとつすると ひとつ さく。」と教えてくれた。
妹のために、自分は着物を買ってもらうのを我慢した少女。
授乳の順番を双子の弟に譲って、その様子を涙を浮かべて見つめる男の子。
命がけで村を救った男の死によって出来た山の話。
著者が後書きに書いている。「みんなの為にささげることこそが、自分を更に
最高に生かすことだ。」
この絵本の子供達を見ていたら、感心するより切なくなった。
それは、彼らが健気だということもあるが 「いつも優先されてた子が小さな
暴君になった」「我慢ばかりしてきた人と家族の間に溝が出来た」という話を、
実際にいくつか見聞きしたのを思い出したからだ。
子供に、思いやりや譲る心、我慢することを教えるのは大事だ。著者の
言わんとするところも、理解している。
だが、“いつも”自ら進んで犠牲になるのはいけない。何かを決める時は「誰か
を犠牲にすることなく解決する方法はないか」と、皆で考えるようにしたい。