数年前中学時代の友人が、最初で最後というシニア夫婦旅行の途中、
飛行機の距離の私の所にも寄ってくれた。直接会うのは25年ぶりだった。
2人で楽しいお喋りのひと時を過ごしたのだが、途中で
「何てきれいな人なんだろう」と、思わず彼女の顔を見つめてしまった。
いや、見た目は2人共ただの婆さんなのだが…(笑)。
そして、「この人は今も中学生の時と同じで、絶対に人に意地悪をしたり、
悪口を言ったりはしないだろうな。」と思った。
彼女は子供の時からある宗教の信者だが、元々の気質がそうなんだと思う。
ご主人は病気で定年前に退職していて、退職金はあったが彼女がずっと働い
て支えてきた。彼女の娘は幼少時に生死をさまよっており、助かった時は
奇跡だと皆で喜んだが、私が知ってるのはそこまでだった。
同居の舅が酒乱だったのには驚いたが、既に亡くなってるので今は問題ない。
だが娘に幼少時の病気の後遺症が出て、娘はそれ以来アルバイトでしか働け
ず、「生まれなきゃ良かった」と言われたという。私は胸が詰まって言葉が
返せなかった。(今回の旅行の切符の手配をしてくれたのは娘さん。)
繁華街の雑踏に消えていく彼女の後ろ姿を、ずっと見送っていたら、突然
振り向いて笑顔で私に手を振った。私はその時、彼女のこの言葉を思い出し
ていた。「娘は、私が最期を看取れたら、それが一番いいのかもしれない。」
…心優しい彼女にそんな経験だけはさせたくない。私は無宗教の人間だけど、
彼女の神様が加護してくれることを願っている。
(年代と家族構成は変えて書いてます。)