[内容]
アル中の父親が病死する迄、生活も心もかき乱され続けた著者の実話。
[感想]
自営業の父親は人付き合いが良くて、地区の行事には積極的に参加し、
休日はいつも自宅で近所の仲間とお酒を飲みながらの麻雀だった。
平日も飲み屋から泥酔して帰ってくることが多く、母親は新興宗教の熱心な
信者だったが、父親の召使いのような生活で、著者が中2の時に自殺した。
著者は母親を守れなかったと後悔し、懲りずに酒に呑まれ続けた父親の
葬儀の時も、「 (大人になってから) 怒って叩いて無視してたのは私。
化け物は私だったのじゃないか。」と、自責の念にかられる。
何故そんなに自分を責めるのか、そんなに自己評価が低くては生き辛かろ
うにと可哀想になるが、小さい時からアル中の父親の後始末をしてきた子が、
そうなるのは不思議じゃないのかもしれない。
おまけにやっと別れた彼氏はDV男で、父親と同じ酒飲みだった。
優しい妹と、最後の大きな後始末の時に助けてくれた人達の存在が救いだが、
今なお「父とは良いこともあった」と罪悪感を持ち続ける著者。
そんな彼女の心の “ズレ”を教えてくれた人の、「1万円払って 100円玉もらって、
それを宝ものにしてるみたいだね。」という言葉は、正に言い得て妙だと思った。
私の知人に、断酒会に通う身内を持つ人がいる。彼女と一緒に居る時、彼女
の携帯に、断酒会の仲間が自殺したという連絡が入って驚いたことがある。
沈痛な面持ちの彼女の口から出た言葉は、「うちが入会してから、もう●人目。」
彼女は更に、「お酒は覚醒剤と違い、誰でもどこでも買えて、しかも世の中は酒の
宣伝であふれている。」 「依存症にまでなったら、アルコール依存症治療専門医
の指導を受けないと、断酒は難しい。」と続けた。本人が病院を拒否する場合は、
まずは家族だけでも相談に行くことが大事だそうだ。