[内容]
寄生虫の生態や症例、寄生虫研究の歴史と様々なエピソードが紹介されている。
[感想]
「寄生虫も、この世に生を受けた神の子の一人」と語る著者の、寄生虫に対する
愛と情熱が凄い。
寄生虫は己の命を保つために“本来の宿主”に大きな害を及ぼすことはしない
そうで、著者はそんな彼らの生き方は大変穏やかなのだと言う。
ただ、死んだフクロウやムササビの腸には、ギッシリ寄生虫が詰まっている事が
多いそうで、野生の世界の食物連鎖だけではない厳しい現実に胸が痛む。
研究の為に自ら寄生虫を飲み込んで、人体感染の実験をした教授、
同じく自らを感染させて、日本住血吸虫を解明した医師、
著者が新種の寄生虫を見つけた時の話など、面白いエピソードが一杯だ。
生野菜や川魚などを安全に食べるための解説もある。
写真や図解入りで様々な寄生虫が分かり易く紹介されているのだが、何故か
途中から私まで彼らが可愛く見えてきて可笑しかった。
世界的にも珍しい寄生虫館は、1953年に著者によって15坪のバラックから
スタートし、その後様々な人の協力と善意によって現在の形となったという。
入館料は現在も無料だそうだ。