[内容]
日本企業の労働者と現地の女性との間に生まれ、その後母親と共に置き去りに
副題『日本がアフリカに置き去りにした秘密』
[感想]
本書は新潮ドキュメント賞、山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞。
1970~80年代のコンゴで、日本の企業により資源採掘事業が行なわれ、社員と
関係者、及びその家族を含めて約670人の日本人が現地で生活していた。
しかし開発計画は失敗に終わり、彼らは日本に引き揚げる際に、さび付いた採掘
工場群と大勢のコンゴ人妻子を現地に残していった。ちなみに妻たちが結婚した
時の平均年齢は、十代半ばだったという。
著者がこの事実を調べ始めたのは2016年、著者のサイトへの投稿がキッカケで、
その内容は「(略)そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺
したことを報道したことはありますか?」と問うショッキングなものだった。
この投稿の情報ソースはBBCとフランス24の報道で、新聞社の特派員として
アフリカに駐在していた著者はすぐにコンゴに行き、初日の聞き取りで、置き去
りにされたコンゴ人残留児(50~200人)の存在を知る。
その後残留児達と母親の家を訪ねて、その半生の聞き取りをして歩くのだが(本書
には彼らの写真も掲載されている)、父系社会が色濃く残るこの地域でセーフティ
ネットを失った彼らの生活は苦しく、差別も受けていた。
それでも、日本人父親を誇りに思うと話す彼らの胸の内を思うと、逃げた日本の
男達に私が感じるのは憤りだけだ。
本書では資源の豊かなコンゴを始め、アフリカが他国から搾取・蹂躙され続けて
きた凄惨な歴史も詳しく書かれている。例えば
・1960年、アフリカでは17カ国が一斉に植民地からの独立を果たした。しかし
植民地時代の境界線をそのまま国境として引き継いだため、民族紛争が激化。
・その昔コンゴはベルギー国王の「私有地」とされた時期があり、その残酷な支
配によって人口が激減していた。 等々
著者はその後も多くの当事者や関係者と会って話を聞いていくのだが、それは
まるで謎解きのようで、それに伴って揺れ動く著者の心も緻密に書かれており、
一緒に考えさせられる場面も多かった。
今回の調査では、コンゴ在住の2人の日本人の並々ならぬ協力があり、彼らの強
い求めにより、日本鉱業の後継企業の社長から「誠意をもって対応することをお
約束します。」という回答が得られている。
最終的に著者は、嬰児殺しを捏造したと思われる現地の記者に行き着く。その後
の展開と結末は割愛するが、BBCとフランス24は最後まで誤報であることは認
めなかったという。
※本書は謎解きの形で進められていたのと、新刊に近かったので終盤は書きま
せんでしたm(__)m。