[内容]
米・英・仏・独・日本の、過去100年分の文献を元に、サヴァンの症例を解説。
副題『サヴァン症候群の驚異』
[感想]
サヴァン症候群と言えば、映画「レインマン」で知的障害のある男性が、床に
散らばった爪楊枝の数を一瞬の目視で当てるシーンを思い出す人も多いと思う。
※『レインマン』…サヴァンの兄とその弟のヒューマンドラマ。兄を演じたのは
ダスティン・ホフマンで、アカデミー賞他数々の映画賞を受賞。
(イ・ビョンホン主演の韓国映画『それだけが、僕の世界』もお勧めです。)
サヴァン症候群とは、知的発達障害のある人が特定の分野において高い能力を有
する状態、あるいはその人を示す言葉で、未熟児で産まれた人が多く脳に損傷が
あったり大脳機能障害があることも多いという。ちなみに女性のサヴァンは珍し
いそうだ。
本書では脳の機能や様々な医者の理論について、患者の症例と共に解説されてお
り、日本の山下清など有名な画家も何人か紹介されている。
彼らの特定のものに対する記憶力は桁外れで、その能力は下記のように人によって
様々な分野に及ぶ。
・カレンダー計算…指定した年月日を、過去・未来に関わらず何も見ずに即答。
・ピアノ演奏…絶対音感があり、楽譜は読めないのに一度しか聞いてない曲を演奏。
・絵画・彫刻…一度見ただけで、その場所や動物などを写真のように正確に再現。
その他難解な書籍を一度見ただけで暗記、驚異的な計算力、特殊な知覚現象などが
あるが、本書で私が感嘆したのは、サヴァンの男性が3週間で仕上げたという、3頭
の実物大の仔馬のブロンズ像だ(表紙の写真)。この人は、実物は勿論本やテレビで
一瞬見ただけの物を、細部にわたって精緻な立体レプリカを作り上げるのだという。
本書は33年も前に出版されたものだが、とても興味深い内容だった。しかしその後
の研究はあまり進んでいないようで、以下に厚生労働省のサイトからサヴァン症候
群について書かれたものを一部抜粋。
「(略)一般的に男性に多く、また自閉スペクトラム症(ASD)の人に多く見られます。
サヴァン症候群についてはまだ解明すべき点が多く残されていますが、現在では
左脳の損傷によるという説が有力視されています。」
ちなみに天才的能力を発揮するのは一部の人達だけで、多くはある分野の能力が
際立っていても、それは本人の知的能力を超えるか超えない程度のものだという。
「サヴァン症候群絵・彫刻」で検索すると、彼らの作品が色々見られます。