ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

出自を知る権利

今から20年程前のこと。知人女性が、自分には弟(40代独身)がいるのだが、彼は

父親の浮気で出来た子で、母親の実子として出生届を出しており本人は今もその

ことを知らない…と話し始めた。

(昭和の中頃迄、養子を実子として届けることは珍しい事ではなかった。)

 

父親は早くに亡くなっており「一人暮らしの母が心配だが、近くに住む弟が面倒

を見てくれてるので有難い。」「出生のことは死ぬ迄本人に話すつもりは無い。」

と言うので、差し出がましいようだが「本当にそれでいいの?」と訊いた。

 

それに対して彼女から返ってきたのは「母は赤ん坊の時から弟を育てたのよ。」

という言葉だった。彼女の夫や一部の親戚はこの事実を知っているという。

私は内心“子が親を知る権利”を奪っていいのか、いつか弟さんが傷つく形で知

る日が来るのではないか…という気持ちでそれを聞いていた。

 

ずっと以前テレビで、アメリカ人医師が自分の精子を使って100人に及ぶ子供を

作っていたという事件を扱ったドキュメンタリーを見たことがある。

※その後アメリカで、この事件を題材に『我々の父親』という題名のドキュメン

 タリー映画が制作されている。

 

ネットを見ると、オランダでも同じような事件でDNA鑑定を求める訴えが起こさ

れており、世界的に見ればこういう事は他にもまだまだあるのかも知れない。

 

オーストリアやイギリスなど多くの国が、「出自を知る権利」を保障しており、

日本も1994年に国連による権利条約に批准している。

その後国内で議論が重ねられ、2020年には国会で民法の特例法が成立しているが、

現在も法案は提出されていないという。

つまり、プライバシー保護のため精子提供者は匿名とするやり方は、未だにその

ままだということだ。

 

しかし今は、いくら親が隠していてもDNA検査などでバレてしまう可能性がある。

子供側の出自を知る権利の為にもこのままではいけないと思うが、匿名をやめる

と(例えば)父親として養育の責任を求められることも起こり得る等々、法制化する

前に検討すべきことが沢山あるらしい。

 

子供達が出自を知りたいと考えるのは当然で、次の2点は特に大事だと思う。

・遺伝性の病気を防ぐためにも、どんな病気にかかりやすいか知っておく。

精子提供者だけでなく、異母兄弟、異父兄弟を知り、近親婚を避けたい。

 

人工授精では無いが、私の周りには他にも何人か血の繋がらない子供を持つ

人がいる。その中に1人「娘が中学生の時に、親戚が勝手に養女であることを

話してしまい、それからずっと娘との関係がギクシャクしてる。」…と、苦し

い胸の内を明かした人がいたが、他は皆さん普通に仲の良い親子だ。

 

そこに至る迄に色々葛藤もあっただろうが、私には、本当のことをきちんと伝

えることにより、逆に子供からの信頼を得られたように感じられた。