[内容]
介護保険をはじめ介護の様々なサービスの解説と、精神科医から見た介護
現場の実態が書かれている。 副題は『自分の人生をあきらめない介護』
[感想]
本書は6章からなり、どれも為になるが「介護離職のリスクに備える基礎知識」
「冷静に考えるお金の話」の章は特に参考になった。
親の死んだ後も子供の人生は続く。 親の介護を一人で抱え込んだために起
きた悲劇を幾つか挙げて、「何年続くか分からない介護のために、仕事を辞
めて親の介護に集中することは絶対に勧めない。」と、著者は忠告する。
その為にすべき事や出来る事として「介護は情報戦。早めの知識と対策を。」
「場合によっては家事代行会社や宅食サービスも利用。」と、これらについて
の詳細な説明が続く。
政府が老人の介護を在宅にシフトしようとしている。時々施設での虐待が
ニュースになるが、データを見ると在宅介護の虐待経験者も驚くほど多い。
在宅介護の期間は平均5年弱だそうで、確かにこれでは介護する側の負担
は相当なものだ。だからと言って、虐待は決して許されるものではないが。
一つ一つ肝に銘じながら本書を読んだが、子供達に迷惑をかけたくないと思
っていても、うまい具合にポックリ逝ける確率は低い。場合によっては施設へ
の入居もやむを得ないと考えたが、介護の仕事をしている知人から言われた。
「当分は、1人暮らしか余程事情のある人でなきゃ施設に入るのは無理よ。
金持ち用のホームに入るお金があるなら別だけどね。」
老いてなお先立つものはお金で、例えば、支払ってきた介護保険料もトータル
すると結構な額になる。しかしガタのきた体でも、介護保険の世話にならずに
暮らせているのは幸せなことで、このまま“安心料”で終わってほしいと思う。