[内容]
2002年に製作されたドキュメンタリー映画『チェルノブイリ・ハート』のガイド本。
[感想]
チェルノブイリ原発事故から16年後に撮影されたこの映画は、現地の実態を
追ったもので、アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞している。
1986年4月、ウクライナ共和国チェルノブイリの原発で、2度の爆発事故が起き、
大量の高レベル放射性物質が飛散した。その被害は広島原爆の約600倍と言わ
れており、煙と粉塵は欧州全土に及んだ。その後原子炉は放射能汚染を防ぐ為
コンクリートで覆われ、それは「石棺」と呼ばれている。
近隣の住民には、事故発生から36時間もの間、何も知らされなかったという。
まず45,000人の住民が、2,000台のバスで強制移住させられたが、その時に許され
た持ち物は3日分の生活必需品だけ。最終的に40万人が移住したが、その後多く
の人が甲状腺や血液の病を発症している。
人がいなくなった廃墟の街では略奪が横行し、それにより放射能に汚染された物品
がソ連全土にまき散らされてしまったという。
事故処理作業員として召集された人々(60~80万人)も大量の放射能を浴び、事故
以後13,000人以上が死亡。原発の現場監督3人は、それぞれ懲役10年を言い渡
され、内1人は自殺している。
※死亡者の数は、時期や調査機関によってバラバラで、いまだ謎とされている。
撮影当時、遺棄乳児院や産院、小児病院には障害のある子が沢山入院していた。
小児病院の医師が「年間300人の子供たちが手術をしている。順番待ちの子供の
大多数が2~5年の間に亡くなる。」と語っており、子供達の写真に胸が痛んだ。
原発から半径30㎞圏内は立ち入り禁止で、昨年(2019年)の写真では、区域内の殆
どで野生動物が繁殖してるのが見られた。しかし廃村は2011年に観光が認められる
ようになり、こちらは国内外のツアー客ですっかり観光地化してるそうだ。