[内容]
福島の原発事故直後に、真実を探る為に素性を隠して原発作業員として働いた
体験談。 副題は『福島第一潜入記』
[感想]
著者はヤクザ専門のノンフィクションライターで、ヤクザ専門誌『実話時代』
の元編集長。本書は2011年夏の約2か月間、福島第一原発の復旧作業に従事
した時の現場の様子が綴られている。
原発が作られた町では、安定した仕事を提供してくれた電力会社を批判するこ
とは、イコール共同体からはじき出されるということで、つまりそれは会社に
とっては隠蔽が容易になる事なのだとか。
その町民をまとめるのが地元のヤクザの仕事で、著者は「暴力というもっとも
原始的かつ実効性の高い手段は、国策としてのエネルギー政策と常にセットで
存在している。」と言う。
このように原発はヤクザにとっては巨大なシノギであり、復旧作業も作業員の
多くは、ヤクザ関係の会社から派遣された人達だった。
作業場での重装備の作業で、熱中症が続出した。しかしプラントメーカーは
死者が出て初めて、やっと原始的な冷却材を配備した…など、被ばくの恐怖だ
けではない、数々の過酷な作業の状況に驚かされる。 他にも
・事故が起きてから、これまでのカウントの基準が変わった(高く設定された)。
・業者も東電関連会社の社員も、サーベイメーターの小細工をあっさり認めた。
・業者間の癒着。 ・巨費を投入した外国の装置がトラブル続き。 等々
職人や業者との規約・誓約書によって隠蔽された東電やプラントメーカーの
不正は、著者が見ただけでも両手の指では足りないそうで、「原発が人間の手に
負えない産物であることは実感した。」と結んでいる。
作業員の被ばくのことも書かれており、著者は万が一に備えて病院で造血幹細胞
を採取していたが、その後の彼らの健康は丈夫なのだろうか。