[内容]
立場の弱い生物・植物は、厳しい環境の中でどのように生き延びて来たのか。
その様々な生態が解説されている。副題『生物界のおきてに学べ』
[感想]
地球に危機が起きる度に命をつないだのは、繁栄していた生命ではなく競争を逃
れ僻地に追いやられていた生命だったという。
生物が生きるための戦いを大別すると、①食う食われるの関係。②他の生物との
競争関係(餌の奪い合い)。③同じ種類の中での覇権争い。 この3つになる。
これらの戦いの中で、弱者はどのように進化していったのか。
動植物が群れたり他の生物に擬態するのは有名だが、その他にもメスを装う、わざ
と目立つ、早死にする等、弱者が地球上で生きる為の作戦は実に様々。
そのどれもが只々不思議で、人間社会にも当てはまることも多く楽しく読んだ。
だが実は、生物は戦わない事を選択している場合の方が多いのだとか。戦うことは
勝っても負けてもダメージが大きく、徹底的に戦わない方が得策だからだ。
草原の草を食べる動物は、互いに争う事のないよう餌場や食べる種類を分けており、
例えばシマウマは地面の草の先端を、ヌ-はシマウマの食べた草の下の部分の茎や
葉を食べるといった具合だ。
哺乳類の群れが仲間内の順位を明確にするのも、エサを見つける度に争っていて
は互いに傷つくだけなので、順位をつけて分配する仕組みになっているのだとか。
昆虫は実に多くの種が擬態によって自らの存在を隠しているが、意外なことに
昆虫界で最強なのはアリなのだそう。
・アリは集団で襲いかかるので、どんな強い昆虫もひとたまりも無い。
・小動物もアリはあまり襲わないので、多くの昆虫がアリに擬態している。等々
食べられることに無防備な植物など無くて、植物側が新たな有毒物質を用意する
と、昆虫はその防御物質を打ち破る方法を身に着ける…という風に、大昔からい
たちごっこの戦いが繰り返されているという。
中でも雑草は強いと思われているが、意外な事に実際は植物間の競争に弱く、よ
く踏まれる道端や草取りが頻繁に行われる場所でなければ生きられないのだそう。
ちなみに私は雑草の小さな花も愛でたい方なので、我が家の庭は結構雑草が多い。
何せタンポポまで移植しているのだから(笑)。
以下に、生き物が生き延びる為の策の中から幾つか抜粋。
・農薬を撒き過ぎると抵抗性のある個体が生まれ、却って害虫が増える事がある。
・通常の植物は成長点が葉の先端にあるが、イネ科植物の成長点は株元にあるの
で、葉の先端を食べられても成長を続けることが出来る。
・カブトムシのオスは普通明け方近くに活動するが、角の小さなオスは他のオス
が眠っている間に動いて、エサもメスも手に入れてしまう作戦をとる。
著者は、生き物の世界を幾つか印象深い言葉で表しており、下記もその一つ。
「ナンバー1しか生き残れない。しかしナンバー1になるチャンスは無数にある。
そしてナンバー1の条件は『誰にも負けない』ことではなく、『誰にもできない』
ことなのである。」