「内容」
漫画家の手塚治虫が、亡くなる少し前に、この地球上の全てのものに対する思いを
綴った随筆。副題は「21世紀の君たちへ」
「感想」
著者の生い立ち・戦争体験・漫画に込めたメッセージ、そして地球の未来について、
中学生でも理解できるよう易しい言葉で語られている。
(執筆途中で病死した為、過去のコメントなども加えて編集。)
若い時は医者との2足わらじだったが、すぐに漫画が本業となった話は有名だ。
子供の時は意外にもいじめられっ子で、しかし素晴らしい自然に育てられたことを
感謝しているという。
「鉄腕アトム」は最初、教育者や父母からは批判の嵐だったなど、代表的な漫画の
エピソードや、作品に込めたメッセージが明かされており、興味深く読んだ。
中学生の時に徹底的に軍国教育を叩きこまれ、「(略)-殺して殺して殺し尽くせば、
物質的脅威 なぞ恐るるに足らんや。」と、日記に書いたことも告白しており、
間違った教育の恐ろしさも訴えている。
手塚氏は若い時から、「先端の科学技術の暴走が、人類滅亡の引き金になる」と
危惧していて、この本でも戦争と地球への冒涜行為を強く警告している。
中でも『未来予測』の内容はさすがで、手塚治虫という人は明晰な頭脳でどこまで
この世界の将来を見据えていたのだろう。
『人間には自然界の生き物を勝手に裁く権利などありません。あらゆる人間の住み
やすい生きやすい社会とは、全ての生物の生きやすい世界へと繋がっている筈です』
『もし輪廻というものがあるなら-(略)-どんな生き物も同じ重さに思えてくるのです。』
漫画の神様と言われた人が、最後にこの言葉を残したことの意味をよく考えたい。