ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

ガラスの地球を救え (手塚治虫) 光文社

「内容」

漫画家の手塚治虫が、亡くなる少し前に、この地球上の全てのものに対する思いを

綴った随筆。副題は「21世紀の君たちへ」

「感想」

著者の生い立ち・戦争体験・漫画に込めたメッセージ、そして地球の未来について、

中学生でも理解できるよう易しい言葉で語られている。

(執筆途中で病死した為、過去のコメントなども加えて編集。)

 

若い時は医者との2足わらじだったが、すぐに漫画が本業となった話は有名だ。

子供の時は意外にもいじめられっ子で、しかし素晴らしい自然に育てられたことを

感謝しているという。

 

鉄腕アトム」は最初、教育者や父母からは批判の嵐だったなど、代表的な漫画の

エピソードや、作品に込めたメッセージが明かされており、興味深く読んだ。

 

中学生の時に徹底的に軍国教育を叩きこまれ、「(略)-殺して殺して殺し尽くせば、

物質的脅威 なぞ恐るるに足らんや。」と、日記に書いたことも告白しており、

間違った教育の恐ろしさも訴えている。

 

手塚氏は若い時から、「先端の科学技術の暴走が、人類滅亡の引き金になる」と

危惧していて、この本でも戦争と地球への冒涜行為を強く警告している。

 

中でも『未来予測』の内容はさすがで、手塚治虫という人は明晰な頭脳でどこまで

この世界の将来を見据えていたのだろう。

 

 『人間には自然界の生き物を勝手に裁く権利などありません。あらゆる人間の住み

やすい生きやすい社会とは、全ての生物の生きやすい世界へと繋がっている筈です』

『もし輪廻というものがあるなら-(略)-どんな生き物も同じ重さに思えてくるのです。』

 

漫画の神様と言われた人が、最後にこの言葉を残したことの意味をよく考えたい。