ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

『太陽に灼かれて(主演)オレグ・メンシコフ』感想

[内容]

スターリンの時代、家族と共に休日を楽しんでいた特権階級の男が、粛清の

罠にはめられていく。      (1994年製作国 露・仏)映画賞受賞

太陽に灼かれて(字幕版)

[感想]

舞台はモスクワ郊外の美しい田園地帯。

ロシア革命の功労者であるコトフ大佐には、若く美しい妻と幼い娘がいた。

この時ソ連では粛清が始まっており、同志たちは次々と無実の罪を着せられ

て逮捕されていたが、大佐はまだ郊外の別荘で優雅に休暇を過ごしていた。

この上流家庭に、10年ぶりに帰郷した青年ドミトリが訪ねて来た。

 

正直言って映画の前半は少し退屈だったが、ドミトリの過去や突然故郷に

帰って来た理由が分かるにつれ、俄然面白くなっていく。

 

コトフ大佐はかつて、妻と結婚する為に自分の立場を利用して、当時彼女の

恋人だったドミトリを遠くの戦場に追いやり、人生を狂わせていた。 

今度はドミトリが、スパイ容疑をでっちあげて大佐に復讐することになるのだ

が、それはただの私怨によるものではなかった。

 

秘密警察の一員として、スターリンの恐怖政治に加担するドミトリに恐さを

覚えながら観ていたが、ラストで最初のシーンの意味が分かり、冷徹に見えた

ドミトリの深い悲しみが伝わってきて切なかった。

 

大佐の幼い娘の、自然であどけない表情がとても可愛い。

大佐と妻の苦悩もきちんと描かれていて、ハッピーエンドではないが冷静に

受け止められるラストだった。ちなみに粛清の残酷なシーンは無い。

 

この映画は三部作となっており、『戦火のナージャ』『遥かなる勝利へ』と続く。