[内容]
偏屈で孤独な老人と、近所の住民との交流を描いたコメディドラマ。
(2015年 製作国 スウェーデン) 映画賞受賞
[感想]
郊外の住宅地で暮らすオーヴェは、規律を乱されることが嫌いで、毎朝近所
を回って、車の出し入れやゴミの分別のチェックまでする評判の偏屈者だ。
彼は半年前に妻を病気で亡くしたばかりで、その上40年以上勤めてきた鉄道
会社を突然クビになり、妻の元へ行こうと自殺を図る。
しかし、何度自殺を試みても、その度に予期せぬ邪魔が入ってしまう。
意図せずに邪魔を繰り返して彼を怒らすのは、最初の自殺未遂の日に近所に
越してきた、若い移民夫婦と彼らの人懐っこい2人の子供たちだ。
自殺未遂の度に、オーヴェの子供の頃からの思い出の映像が流れ、彼がどれ程
妻を愛していたか、この夫婦にどんな出来事が起きたのか、また不器用で口の
悪い彼が、本当は尊敬に値する人間だということが分かってくる。
父親を思い出すシーンで、オーヴェのナレーションが入る。「父はよくお人好
しと言われたが、人がよくて何が悪い。」
その父親が息子のオーヴェに、「何事も正直が一番だ。だが正直には時に後押
しがいる。」と言って、軽くジャブを打つポーズをとるシーンが印象的だ。
長年疎遠気味だった病気の友人や、教師だった妻の教え子の青年など、様々な
人との交流でオーヴェは少しずつ心を開いていくのだが、この展開は決して
偶然などではなく、彼の本物の優しさが招いたものだった。
本当は子供も野良猫も好きで、困ってる時には助けの手を差し伸べたオーヴェ。
彼が病気で亡くなった時は、葬儀に大勢の人が集まり、私も胸が熱くなった。