ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

競争からちょっと離れると人生はうまくいく(枡野俊明)三笠書房

[内容]

禅の教えから学ぶ生き方が説かれている。

副題は『禅的、「比べない」「責めない」「こだわらない」生き方』

[感想]

著者は美術大学の教授で、庭園デザイナー。禅僧でもある。

他にも多くの本を出しており、『心配事の9割は起こらない』はベストセラー。

 

人は皆、縁の中で生かされていることに気付き、誰かと競うのではなく磨き合

う生き方をせよと説く。又、執着せずに競争からたった一歩離れるだけで、驚

くほど大事なものがたくさん見えてくると言う。

 

「自分に誇りがあると一歩引ける」「見えないところほど手を抜くな。」 

「野心が行き過ぎると“臭気”を放つ」等々、心に響く言葉や戒めになる話が

禅語と共に語られており、経験以外に自分を成長させてくれるものはないと、

考えているばかりでは駄目なことも教えている。

 

しかし、この世は正に競争社会。 昔「15の春を泣かせまじ」という言葉が盛

んに言われたことがあるが、まず人生で最初に誰もが否応無しに直面させられ

るのが、高校受験だ。皆、少しでも偏差値の高い高校を目指し、結局は行きた

い高校ではなく、どこなら合格できるかで選ぶことになる。

 

少しずつ変わってはきているが、高校受験制度には色々問題点がある。

だが実は、受験に限らず競争は悪い面ばかりではない。上を目指して努力し、

他の人と刺激しあうことによって自分の位置が分かり、成長出来ることがある。

著者も、自分さえ良ければと蹴落としたり、嫉妬したり、大事なことを見失うな

どの間違った競争を戒めているのであって、磨き合いなさいと言っている。

 

本書の中に「陰の徳を積むのがもっとも尊い」という言葉があった。

私は、秘かな善行を行える人にこそ、出来れば陰徳にこだわらず、周りの人間

を育ててほしいと思う。徳積みとかに関係なく、善いことは見習いたいので。

ダーウィンの悪夢 (ドキュメンタリー) 

[内容]

ビクトリア湖に繁殖した肉食魚により、貧困と治安の悪化に陥った現場を撮影。

               (2004年 製作国 フランス他) 映画賞受賞

[感想]

アフリカ最大の湖、ビクトリア湖に意図的に放たれた肉食魚ナイルパーチ

これによって生態系が破壊され、他の魚は全滅した。この肉食魚はスズキに

似た白身の魚で、多くは欧州と日本に輸出されているという。

 

この魚は切り身にさばいて輸出され、高価なため地元の人達はその残りのアラ

を食べている。アラが捨てられる場所はとても不衛生で、大量のアラからのアン

モニアで片目をやられた女性も映し出されていた。 

 

ドキュメンタリーの舞台となった湖畔の町に病院は無く、治安も悪い。住民の多

くは仕事が無くて極貧だ。エイズが蔓延し浮浪児と売春婦が大勢いる。

更に驚くのが、魚を欧州に持って帰る飛行機がこちらに来る時は、戦争の為の

武器を積んでいて、それをアフリカ各地に運んでいることだ。

 

この映画は多くのドキュメンタリー賞を受賞しているが、貧困や治安の悪さを全

ナイルパーチのせいにしている、といった批判的な声も多い。

政府も「ナイルパーチは雇用と金と食料をもたらす」「食料不足は無い」と主張し

ているため、このような事態を招いているのは魚ではなく、政府の無策のせいだ

と考える人は多いという。

 

『群盲象を評す』という有名な寓話があるが、ドキュメンタリーも製作者側の捉え

方によって全く別物になる。「この映画は一面だけを強調している」というのは、

もしかしたらそうなのかも知れない。だが、あの映像は現実だ。たとえ無力でも

自分達に出来ることはないかと考えることが大事だと思う。

ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD]

手のひらで痛みを、呼吸法で高血圧を軽減。

昔食事の席で知人女性が、ビールの入ったコップに手をかざして気を抜い

て見せたので、その場に居た全員が驚いたことがあった。

 

数年前のこと。ミカンが酸っぱかったので、1個丸ごと手のひらに包んでみ

た結果、30分後には思ったより酸味が和らいでいたので喜んで食べた。

まあこれは単に酸っぱみの原因のクエン酸が消費されただけで、ハンドパワ

ーでも何でも無いのだが(笑)。

 

ハンドパワーを謳うものには詐欺が多いので、胡散臭いイメージがある。

しかしイエス・キリストを始め、昔から手を当てて病人を治したという話は

世界中にあり、何らかのパワーを持つ人はいるのだろう。

 

これは実行している人が多いと思うが、私も腰痛や膝痛・ばね指が起きた時

などは、症状が軽ければ、自分で文字通りの“手当て”をする。

手当ての方法は「患部に5~10分程手のひらを当てて同時に呼吸法をする」

これだけなのだが、こうすると血流が良くなるのもあって、痛みが軽減する。

 

血圧や体温が、深呼吸で一時的に少し下がることもよく知られている。

私は毎日降圧剤を服用しているのだが、それでも血圧が高過ぎる時があり、

そういう時や、微熱が出た時は呼吸法をするようにしている。

 

ただ私の場合は、深呼吸だと少し頭がクラクラしてくるので、正確には

“ゆっくり呼吸”だ。これは私のやり方が下手なのもあるが、元々酸欠っぽ

くなりやすいのと関係があるらしく、そういう人は要注意だという。

 

いずれにせよ、これらはあくまでも一時的なものなので、病院で診てもらう

時期を間違えて悪化させないよう気を付けて下さい。

ケーキの切れない非行少年たち (宮口幸治) 新潮社

[内容]

非行に走る少年達の実態と、その原因・更生の方法・予防法が解説されている。

[感想]

著者は児童精神科医で、医療少年院で非行少年達と関わってきた経験から、

学校教育に欠けているものと、彼らに本当に必要なものに気付いたという。

 

少年鑑別所に来て初めて障害に気付かれる子達がいるそうだ。

中には、ケーキを等分に切ることが出来ない、簡単な図形を模写することが出来

ないという子達もいて、彼らの特徴は 「感情統制が弱い・融通が利かない・対人

スキルに乏しい・身体的に不器用・自己評価が不適切」…等で 何よりも認知機能

が低く、反省以前の問題だとか。

 

現在知的障害は「IQ70未満」と定義されているが、昔はIQ85未満とされていた。

定義が変わったからといって、IQ70~84の 軽度知的障害(境界知能)の子供が

いなくなったわけではなく、著者は学校の1クラスに5人はいると考えている。

 

私が子供の頃は、学校に魯鈍(ろどん)と呼ばれる子がいることも珍しくなかった。

もしそういう子の一部が今でも普通学級で学んでいるのなら、勉強についてくの

は大変だろうと思う。   魯鈍 = IQ 50~75の人のこと。(現在は差別用語)

 

だが学校教育(特別支援教育含)がうまく機能しているとは言えず、著者は彼らに

は勉強の支援と、「感情のコントロール、対人マナー、問題解決」といった社会

面の系統だった教育が必要だと言う。

 

又、昨今主流の褒めて伸ばす教育方法について、“褒める” “話を聞いてあげる” 

だけでは、子供の問題を先送りしているにすぎないと指摘。重い問題を抱えた子

の教育は、本当に難しいものだと考えさせられる。

 

最後の章では著者考案の「覚える・数える・写す・見つける・想像する」の5つの

レーニングからなる、脳の認知機能を向上させる方法が一部紹介されている。

ドリームガールズ (主演) ビヨンセ・ノウルズ

[内容]

1960年代の人気グループ、シュープリームスをモデルにしたミュージカル。

                 (2006年 製作国アメリカ) 映画賞受賞

[感想]

主役のビヨンセが演じるのは、シュープリームス時代のダイアナ・ロス

物語は 黒人3人の女性グループが、オーディションを受けるところから始まる。

 

業界の裏側は、表のきらびやかさとは正反対で黒人差別は当たり前、白人に

よる盗作には泣き寝入り…という世界だった。

そんな中でも頑張って彼女たちは少しずつ売れていくのだが、やり手マネージャー

の割り切ったやり方に、仲間内で衝突・反目・嫉妬が渦巻くようになり、彼の子

を身ごもっていたエフィが怒りに任せてグループを脱退してしまう。

 

そこから様々な出来事をクリアして、スターダムにのし上がっていくのだが、

ストーリーがあるのを忘れるくらいふんだんに歌を聴かせてくれて、そのどれも

が抜群の歌唱力で素晴らしい。

 

ビヨンセがうまいのは当然だが、あのエディマーフィも吹替かと思うほど歌が上手。

特にエフィ役のジェニファー・ハドソンが自分の感情をぶつけて歌う場面は圧巻で、

私は最後まで主役は彼女だと勘違いしていたほどだ。

 

今まで観てきた中でもトップクラスの楽しいミュージカルで、セリフの場面と歌う

場面の切り替えに、全く不自然さが無いのも良かった。

 

私が若い時によく聴いていたソウルミュージックと言えば、オーティス・レディング

(26歳没)。レコードはもう手元にはないのでYouTubeで確認したら、ありました。

この映画でソウルミュージックに興味を持った若い人には、この人もお勧めです。

ドリームガールズ (字幕版)