ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

親子リレー住宅ローン

昔20代後半の知人が、舅から「将来お前達も住むことになるのだから。」と

親子ローンを組まされ、夫が親の言いなりだと嘆いていたことがあった。

彼らは転勤族だったので結局故郷には住まず、後年都会に自分達の家を建てた。

 

親子ローンを利用している人の多くは同居しているようで、殆どは問題ないと

思うが、それでも子供があまりにも若すぎる場合はどうなんだろう。

 

以前住んでいた家の近所に、かなり傷んだ家があった。だがある時立派な家に

建て替えられたので、周りの人達は皆驚いた。そのお宅の事情を知る人が、彼

らに金銭的な余裕は無い筈だと話していたからだ。

 

後に、家は息子さんと親子ローンを組んで建てたのだと分かった。彼はまだ

20歳を過ぎたばかりだったが、本人が納得しているのなら、周りがとやかく

言うのは余計なお世話だろう。

しかし親子ローンは子供側にはデメリットもあり、正直言ってそんな若い子が、

奨学金の比ではない大きな借金を背負うのかと、少しやるせなかった。

 

その少し後に我が家も家を新築した。銀行から郵送されてきた住宅ローンの

返済予定表を見たら、最初は殆どが利子の返済で、分かってはいたがこれ程

酷いのかと驚いた。又、当時は今とは比較にならないほど金利が高く、返し

ても返してもなかなか元金が減らないことを考えて、銀行員から「心配し過

ぎ」と苦笑されたが、出来るだけ繰上げ返済できるよう頑張った。

 

先日、まだ金利の高い時に家を建てた知人が、借り換えの手続きを終えて

(親子ローンではないが)子供に負担をかけなくて済んだと喜んでいた。先の

見通せないこの時期、やはり早めに借入先に相談することが重要だそうだ。

職業は武装解除 (瀬谷ルミ子) 朝日新聞出版

[内容]

世界の紛争地域の、復興と治安維持に携わった経験が綴られている。

[感想]

日本にもこんな凄い女性がいたのかと驚いた。

シリアスな内容だが、時にユーモアを交えた分かりやすい文章。

 

高校生の時、ルワンダ虐殺の写真を見て著者が思ったのは

「日々のニュースを眺めて、嘆きながら救世主が現れるのを待つのではなく、

自分が状況を変える側になる。」ということだった。

この時に紛争解決を職業とすることを志し、日本の大学を卒業後イギリスの

大学で紛争解決学の修士号を取得。

 

その後、23歳の時からNGO、国連PKO(国連平和維持活動)、外務省の

職員として、紛争後の復興・治安改善・武装解除を仕事としてきた。

 

本書では中東やアフリカの現状、武装解除後の子供兵士のことなどの他、国連

と外務省やNGOとの違いにも触れている。

「現地の人々が出来ることは現地の人にやってもらう訳」など、深く考えさせ

られる内容で「“出来ない”と“やらない”は違う」という言葉には、心にズシンと

くる重みがある。

 

著者はこの仕事で、争いの後の加害者の更生だけでは、“命”など取り戻せない

ものがあることを痛感。30代からは紛争予防のための活動に変えて、現在は

特定非営利活動法人Reach Alternatives」の理事長として働いている。

(旧名称は「NPО法人日本紛争予防センター」で、今年3月に改名。)

 

下記は現在43才となった著者の受賞歴で、代表的なものを2つ。

・2011年  「世界が尊敬する日本人25人」 (日本版ニューズウィーク誌)

・2020年  「2020年の主役50人」(週刊AERA)      

 ルーム (主演) ブリー・ラーソン 

[内容]

7年もの間軟禁されていた女性が、息子と共に救出されて立ち直る迄のヒュ

ーマンドラマ。        (2015年 製作国 アメリカ他)  映画賞受賞

[感想]

この映画は「フリッツル事件」を原作とした小説をもとに製作されたものだが、

実際の事件よりずっと救いのある内容で、数々の賞を受賞している。

※フリッツル事件 =2008年にオーストリアで、17歳の時から24年間自宅

   の地下室に閉じ込められ、父親の子供を7人出産していた女性が救出された。

 

小さな天窓があるだけの狭くて薄暗い部屋で暮らす、若い母親ジョイと5歳の

息子ジャック。部屋にはベッド・テレビ・小さなお風呂と流し台があり、2人は仲

良く暮らしていたが、この部屋から一歩も外に出たことがなかった。ジャックは

テレビの世界は本物ではなく、この部屋が世界の全てだと聞かされて育っていた。

 

時々男が生活物資を持ってやって来るが、ジョイは仕方なしに従っていて、息子

には触れさせない。ある冬の朝目覚めると、腹を立てた男によって部屋の電気

が止められていた。実はこの部屋は小さな物置小屋で、ジョイは7年前この男に

誘拐され、ジャックが産まれた後もずっと小屋に軟禁され続けていたのだった。

 

ジョイは子供だけでも逃がそうと決心し、ジャックに「本当の世界は外にある。

あいつを騙すのよ。」と言って、怖がるジャックに死んだふりをさせ、男に息子

の“死体”を運び出させる。

 

幾つかの幸運が重なって、ジャックは無事警察に保護され、男は逮捕。ジョイも

救出されて母の家に帰ることが出来たが、ここから別の苦しみが始まる。

事件が大きく報道された為、家の周りは報道陣に囲まれ、人々の好奇の目と

マスコミの心無い質問に、ジョイの心は壊れていった。

 

ジョイが立ち直るまでに色々な事が起きるが、2人を辛抱強く支える家族が素晴

らしく、ジャックの成長と健気さにも心打たれた。希望のあるラストが嬉しい。

ルーム(字幕版)

訪問販売員の捨てゼリフ

訪問販売は説明を聞く前に断るようにしている。

キッカケは幼児用教材セットだった。今から40年以上前の話で、価格は

確か10万円程。その時のセールスマンは40歳くらいの男性で、こちらの

対応の不慣れを見透かしてか、断ったのに食い下がってくる。

 

「絶対にお子さんの為になります。買わなくてもいいから、とにかく一度

話を聞いてみて下さい。自分の(営業の)勉強にもなりますので。」と言われ、

あまり邪険にも出来ず「聞くだけなら…。」と答えたのが間違いだった。

 

最初は黙って聞いていたが、何か違うなと思い、自分の考えを伝えた。

すると突然顔つきを豹変させ、ドスのきいた声で「そんな独りよがりな考

え方をしてたら、今に後悔するぞ!」と吐き捨てるように言われた。

私の膝には幼い息子が座っており、男性が出て行く迄の間とても怖かった。

 

「買わなくてもいい」「自分の勉強にもなる」こんな言葉を真に受けた私が

バカだったが、訪問販売は出来高制で、売れなければ給料が発生しないこ

とも多い。無駄な時間を使わせない為にも、嫌な思いをしない為にも、今後

はキッパリ断ると決めた。

 

つい先日のこと。話を聞く前に断った私に「インターホンに出て頂いて、

有難うございました。」と言って帰った女性がいた。

望まない突然の訪問者に玄関を開けないことは、防犯の意味でも失礼なこと

だとは思わないが、私はその人の礼儀正しさに驚くと共に、大丈夫かなと

何故か胸が少し痛んだ。訪問販売は離職率が高く、親類知人を勧誘して回

った後に結局はやめてしまった、という人を何人も見てきてたので…。

病んだ家族、散乱した室内 (春日武彦) 医学書院 

[内容]

精神科医による、精神病患者の援助者としての心構えと、実践の為の指導書。

副題は『援助者にとっての不全感と困惑について』

[感想]

精神分裂病(統合失調症)を始め、依存症、ウツ、痴呆といった脳や心の病に

関する説明と、経験に基づいた指導が具体的で、私のように患者と直に接す

ることが殆ど無い人間にも、教えられることが多かった。

 

「気まぐれな親切心だとか、チープな感傷、腹の据わらぬ使命感、見せかけだ

けの論理的整合性、盲目的なマニュアル信奉に支配された人々が、決して真

の専門家とはなれない理由もそこにある。」 

建前や原則は一切排除して書いたと言う通り、このように歯に衣着せぬ言葉が

多いが、これは様々な分野に言えることで、頷いている人は多いかも知れない。

 

次も厳しい意見だが、現実を見てきた人ならではの率直な思いなのだろう。

(患者が子供を持つ事に関して) 「甘っちょろく無鉄砲な判断は困る。病人とし

て援助を受ける権利があると同時に、ハンディを負わざるを得ない現実にも目

を向け-(略)。」

 

病気そのものよりも、家族関係が問題になることも多いそうで、家庭内で抱え込

むことと、使命感だけで対処することの間違いを指摘。

可能な限り納得のいく手を打ち、心のゆとりを持つことが、予想以上に効果的で

問題解決への第一歩を踏み出すことになるという。

 

著者が医師として訪問する家庭には、例えばゴミ屋敷だったりなど、環境の問題

も多いそうで、本書は2001年の出版だが、訪問介護の仕事をしている知人によると

今も状況はさほど変わらないらしく、一筋縄ではいかない難しさがあるようだ。