[内容]
ビクトリア湖に繁殖した肉食魚により、貧困と治安の悪化に陥った現場を撮影。
(2004年 製作国 フランス他) 映画賞受賞
[感想]
アフリカ最大の湖、ビクトリア湖に意図的に放たれた肉食魚ナイルパーチ。
これによって生態系が破壊され、他の魚は全滅した。この肉食魚はスズキに
似た白身の魚で、多くは欧州と日本に輸出されているという。
この魚は切り身にさばいて輸出され、高価なため地元の人達はその残りのアラ
を食べている。アラが捨てられる場所はとても不衛生で、大量のアラからのアン
モニアで片目をやられた女性も映し出されていた。
ドキュメンタリーの舞台となった湖畔の町に病院は無く、治安も悪い。住民の多
くは仕事が無くて極貧だ。エイズが蔓延し浮浪児と売春婦が大勢いる。
更に驚くのが、魚を欧州に持って帰る飛行機がこちらに来る時は、戦争の為の
武器を積んでいて、それをアフリカ各地に運んでいることだ。
この映画は多くのドキュメンタリー賞を受賞しているが、貧困や治安の悪さを全
てナイルパーチのせいにしている、といった批判的な声も多い。
政府も「ナイルパーチは雇用と金と食料をもたらす」「食料不足は無い」と主張し
ているため、このような事態を招いているのは魚ではなく、政府の無策のせいだ
と考える人は多いという。
『群盲象を評す』という有名な寓話があるが、ドキュメンタリーも製作者側の捉え
方によって全く別物になる。「この映画は一面だけを強調している」というのは、
もしかしたらそうなのかも知れない。だが、あの映像は現実だ。たとえ無力でも
自分達に出来ることはないかと考えることが大事だと思う。