ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

『別離(主演)レイラ・ハタミ』感想 

[内容]

離婚寸前の男性が家政婦の嘘から訴訟に巻き込まれ、そこから其々の家庭の

問題点と、イラン社会で生きる難しさが浮き彫りにされていく。

                  (2011年 製作国イラン)映画賞受賞

別離 [DVD]

[感想]

銀行員のナデルは、英語の教師である妻から、娘(11才)の教育の為に海外に

移住したいと言われていた。しかしナデルはアルツハイマーの父親を心配して

首を縦に振らず、反発した妻が家を出て行った為 離婚の危機に陥っていた。

 

ナデルは、自分が留守の間父親の面倒を見てくれる家政婦を雇う。

ある日父親が意識不明になったことで、家政婦と言い争いになり、激高して

彼女を無理に玄関から押し出してしまう。

 

悪いことにその夜家政婦は流産してしまい、夫に責められることを恐れた彼女

は、流産をナデルのせいにして夫婦でナデルを告訴することに。

この女性は下層階級出身で、夫は無職の上に借金持ち。しかもひどく短気な

性格なのだが、信仰深い彼女の行動の基準は宗教の戒律なので、夫は“絶対”

だった。

 

訴えられたナデルは、逆に父親の件で家政婦を告訴。家族や関係者を巻き込

んでの論争が始まる。しかし誰もが保身や家族を守る為に嘘の証言をし、頑と

して自分の意見を曲げず、裁判は混沌とした状況になる。

ナデルの娘はとてもしっかりした子で、大人に振り回されて流す涙が不憫。

 

日本も封建時代は似たようなものだと思うが、この映画はイスラム教とイラン人

の国民性、貧富の差、男尊女卑の様がよく描かれていて、そのあたりも興味深

く観ることが出来た。

〈漫画〉『ブランカ』『こもれ陽の下で』感想 

         ★ブランカ (谷口ジロー) 小学館文庫

[内容]

闘犬として改造された白犬と、逃走したこの犬を狙うハンター達の物語。

[感想]

自分を改造した軍事研究所を脱走し、ニューヨークに住む大好きな飼主の元

へ帰る為に、ひたすらアラスカの山脈を走り続ける白い犬ブランカ

 

狼の群れをも従える驚異的な身体能力で、鹿を喰らい、熊と戦い、軍の狙撃手

や賞金狙いのハンターを次々と殺していく。

 

彼を見たイヌイットは、自分たちの先祖が殺してきた動物のシラ(精)の化身

だと恐れるが、勝手に改造され追われ続けるブランカが只々哀れで泣けた。

 

絵も良くて、読み終えた後に改めて最初の頁から、絵だけをゆっくり眺めて

楽しんだ。  続編があり、「ブランカ2」「神の犬」へと続く。

 

        ★こもれ陽の下で  (北条司) 集英社全3巻

[内容]

植物と心を通わすことの出来る少女の物語。

[感想]

本当は大人なのに小学4年生のまま成長せず、それを周りに知られる前に

引っ越すことを繰り返す少女とその父親。

 

北条司と言えば『シティハンター』が有名だが、この作品は全く色合いが違い、

事件が起きると植物に訊いて問題解決に奔走する少女の、木や草花に対する

目が嬉しくなるほど優しい。

 

彼女を想う少しドジな同級生の男の子とのラストも素敵だった。

子供の神経痛と成長痛

北海道の実家は海の近くにあり、海風が吹いて冬はひと際寒さが厳しかった。

小さい時は学校から帰ると、母がぬるま湯を入れた洗面器を用意してくれ、

そこに両手を浸すとジワーッと温まってくるのが嬉しかった。

 

冬はコロコロに着込んでいたが、小3の頃から数年間、真冬の間だけ両足

と肘のあたりが神経痛のように痛むようになった。

末の妹にも同じ症状があり、夜に布団の中で泣く妹の足を、母が温めながら

マッサージしていたのを憶えている。

幸い自然に治ってくれたが、医療が進歩した今は、早期に治療することで

慢性化を防ぐことが出来るそうなので、我慢は禁物だ。

 

3男が5歳の時、夜になると時々足(下肢)が痛いと泣くようになった。

私の時と同じ神経痛かと思ったが、診察の結果どこにも異常はなく朝には

ケロッと治っているので、「多分成長痛でしょう。」と言われた。

 

成長痛というのは俗称で、実際に骨が成長する時に痛みが出るわけではない。

3~12才の子供の10~20%に見られる症状で、筋肉の疲労やストレスなどが

原因と言われているが、本当のところはよく分かっていない。

これといった治療法は無く、さすってあげたりストレッチ体操を行うと、痛

みが和らぐと言われる。

 

3男の足の痛みは医者の言う通り短期間で治ってくれたが、スポーツによる

骨端軟骨損傷や、他の病気で痛みを繰り返す場合もあるので、痛みがある時

は早めに診察を受けることが大事だそうだ。

『やがて消えゆく我が身なら(池田清彦)』感想 

[内容]

少し辛口で時に痛快な、色々と考えさせられるエッセー。

[感想]

著者は生物学者。本書では、グローバリゼーション、言論の自由、臓器移植

等々、社会の問題を幅広く考察していて、中には下記のような面白い意見も。

 

「激しい運動をすると、脳内にエンドルフィンが分泌される。(略)毎日苦しい

運動に励んでる人は 本人は努力と思ってるかも知れないが、本当は中毒だ

ったりしてね。」(←ジョークです)

「これまで地球上で生まれた総人口の6~14%は、今生きてるってわけだ。

我々は何となく ご先祖様は無限にいらっしゃると思ってるが、それはとんだ

勘違いなのである。」

 

日本の各地で “外来種による被害”を排除することを目的に、多くの動植物

が根絶やしにされようとしている。著者はそれを、

「そもそも現在の生態系自体が在来種と外来種の競争と共存の歴史の産物

なのである。外来種さえ排除すれば生物多様性が守られるといったそんな

単純な話ではないのだ。」 「それを科学や正義の問題だと思い込むと最後

ナチスのようになる。」と警告。

 

以前、野生化したタイワンザルとニホンザルとの間で混血が出始めた時、学会

から安楽死の要望が出た。著者はそれに対しても「子供を産むのを遺伝子

汚染というのは、随分ふざけた物言いだと思う。」とバッサリ。

※ネットで調べたところ、「和歌山タイワンザル群れの根絶の報告」(2019年)

という記事があった。猿たちがどのようにして根絶させられたかがよく分かり、

胸が痛くなった。著者の考えの方が人として真っ当だと思う。

 

著者の専門分野の話の中では、特に「人間のDNAに割り込んで生き延びる内在性

ウィルス」「ヒアリアリとオオズアリの壮絶な戦い」が、分かりやすくて面白か

った。  

『ヘアスプレー(主演)ニッキー・ブロンスキー』感想  

[内容]

ダンサーを夢見る、太めの女子高生を中心に繰り広げられるミュージカル。

                     (2007年製作国アメリカ)

ヘアスプレー [DVD]

[感想]

舞台は1962年アメリカのボルチモア。人種や体形に対する差別に焦点が当て

られており、普通なら重くなりそうな内容だが、ストーリーがシンプルで楽

しいミュージカルだった。

 

トレイシーはいつも明るくて前向きな高校生。ビッグサイズの体形だがダンス

が得意で、ヘアスプレーとラジオが有ればご機嫌だ。

ある日憧れのダンサーと踊るのを夢見て、人気テレビ番組のダンスオーディ

ションを受けるが、太ってるのを理由にあっけなく落選してしまう。

 

トレイシーはその日オーディションの為に学校を遅刻しており、罰として

“居残り教室”行きを命じられる。しかしその教室では、思いがけず黒人の

生徒達がダンスを楽しんでいて、すぐに彼らと意気投合。

 

その後トレイシーは幸運にもテレビ番組のレギュラーとなり、どんどん人気者

に。そんな彼女に嫉妬するライバルの母娘の企みが、漫画チックで可笑しい。

その後、白人と黒人が一緒に踊る“ミックスダンス”を目ざしたデモ行進など、

色々な事が起きるが、差別に立ち向かう仲間や両親の支えのお陰で逞しく成長

していく。

 

ジョン・トラボルタがトレイシーの母親役で出演しているのだが、さすが

サタデー・ナイト・フィーバー』(30年前のダンス映画)の主役を演じた人で、

あの特大サイズのファットス―ツであれだけ踊れるのは凄い。

 

あと、太めのトレイシーのダンスもチャーミングだったが、何といっても黒人

の若者達の歌とダンスが素晴らしく、男女共に見惚れるほど良かった。