[内容]
少し辛口で時に痛快な、色々と考えさせられるエッセー。
[感想]
著者は生物学者。本書では、グローバリゼーション、言論の自由、臓器移植
等々、社会の問題を幅広く考察していて、中には下記のような面白い意見も。
「激しい運動をすると、脳内にエンドルフィンが分泌される。(略)毎日苦しい
運動に励んでる人は 本人は努力と思ってるかも知れないが、本当は中毒だ
ったりしてね。」(←ジョークです)
「これまで地球上で生まれた総人口の6~14%は、今生きてるってわけだ。
我々は何となく ご先祖様は無限にいらっしゃると思ってるが、それはとんだ
勘違いなのである。」
日本の各地で “外来種による被害”を排除することを目的に、多くの動植物
が根絶やしにされようとしている。著者はそれを、
「そもそも現在の生態系自体が在来種と外来種の競争と共存の歴史の産物
なのである。外来種さえ排除すれば生物多様性が守られるといったそんな
単純な話ではないのだ。」 「それを科学や正義の問題だと思い込むと最後
はナチスのようになる。」と警告。
以前、野生化したタイワンザルとニホンザルとの間で混血が出始めた時、学会
から安楽死の要望が出た。著者はそれに対しても「子供を産むのを遺伝子
汚染というのは、随分ふざけた物言いだと思う。」とバッサリ。
※ネットで調べたところ、「和歌山タイワンザル群れの根絶の報告」(2019年)
という記事があった。猿たちがどのようにして根絶させられたかがよく分かり、
胸が痛くなった。著者の考えの方が人として真っ当だと思う。
著者の専門分野の話の中では、特に「人間のDNAに割り込んで生き延びる内在性
ウィルス」「ヒアリアリとオオズアリの壮絶な戦い」が、分かりやすくて面白か
った。