ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

『手紙(主演)山田孝之』感想 

[内容]

強盗殺人を犯した兄のために、犯罪者の家族として辛い思いで生きる若者

の物語。 東野圭吾原作。            (2006年製作国日本)

手紙

[感想]

両親を亡くし弟と2人で暮らしていた剛志は、弟の学費欲しさに盗みに入り、

誤ってその家の主婦を殺して無期懲役の判決を受ける。

 

弟の直貴は高校を卒業してから工場で働いていたが、人殺しの家族として

差別される度に心を閉ざしていき、職も転々として誰とも打ち解けようとし

なかった。だが彼にも夢はあり、それは幼馴染みとコンビを組んで漫才師に

なることだった。

 

直貴と同じ工場で働く由実子は、そんな彼に好意を寄せて見守っていた。

最初は無視していた直貴だったが、変わらぬ優しさで接してくれる由実子に惹

かれ始めて結婚。子供も出来て、事件以来初めて幸せな日々を過ごすように。

 

ところがある日、娘が兄のせいで苛められていることを知り、事ある毎に犯罪者

の家族として差別されてきた直貴は、兄と離別することを決意。

獄中の剛志は心から罪を償う日々で、毎月直貴に手紙を書いていたが、そんな

兄に絶縁の手紙を送る。

 

現実の世界でも加害者家族は辛い状況に置かれ、自殺が後を絶たない。

彼らに対する世間の冷たい目と、執拗な報道関係者。そして昨今は、ネットで

の中傷も凄まじい。

 

本社の会長が直貴に語る言葉が、厳しくも温かい。「自分が刑務所に入れば

それですむという問題じゃない。今の君の苦しみ、それをひっくるめて君の兄

さんの犯した罪なんだ。」「差別のない場所を探すんじゃない。君はここから

始めるんだよ。」

 

直貴が刑務所の慰問で漫才をするシーンがある。それを観る兄が、涙を流して

合掌する姿には胸がつまったが、力強いラストで良い映画だった。