[内容]
前半は、20数社の同族会社経営者が語る「ファミリーとビジネスの真実」
後半は各種調査データによる「同族経営の分析」となっている。
[感想]
著者は、日本経済新聞社編集局シニアエディター。
同族企業については、大塚家具の “骨肉の経営権争い”や 大王製紙会長の“カジノ
賭博”といった類の報道により、マイナスのイメージを持つ人が多いが、実は日本
の中小企業の90%以上は同族経営で、トヨタを始め日本の上場企業の約半数が同
族企業だ。ちなみにアメリカとドイツも4割前後が同族だという。
巷では、バカ息子の暴走・丼勘定の経営・親族との軋轢…こういったことが同族会
社の定番のように語られることがある。
本書でも「会社が大きな借金を抱えていた」「兄弟や一族の対立で社内が分裂」「ビ
ジネスモデルが古くてジリ貧状態」など、どちらかと言うと事業が順風満帆に継承
されたケースは少なく、その時のピンチをどう乗り越えたかという重い話が多い。
しかし本書に登場する会社のトップが語った、ピンチに直面した時の対処法や、売
上高を伸ばすための成長戦略とその努力は、まるでドキュメンタリー小説を読むよ
うに面白く、経営者ならずとも為になる内容だった。
また本書後半の同族経営の分析は、前半に負けない面白さでこちらも興味深く読む
ことが出来た。本書によって読者は、譲る側・継承する側の心構えやコツなども学
べると思う。
ここで1つだけ会社の紹介を。『YKKグループ』は世界最大のファスナーメーカー
で、アルミサッシの国内シェアは第1位を誇る企業だが、非上場の大企業の代表格
としても有名だ。二代目社長は脱同族を進める一方、「株は事業への参加証」と考
え、外部の資産家が所有することを許さず、今では社員持ち株会がYKKの筆頭株主
となっている。ちなみに二代目の時の売上高は1.8倍だったそう。
同族企業の後継者には、入社してから国内外の大学で経営学を学ぶ人も多く、
しかし本書を読むと、会社の衰退を防ぐためには経営者の直感と気付きの力も大き
く、それは経営に対する責任感と本気度で培われる。そこに同族という甘えが入る
余地は無く、むしろプレッシャーの方が大きいようだ。
同族会社についての様々な調査結果にも多くの頁が割かれており、以下はその一部。
◎売上高成長率からみた場合、後継者は「年齢が若い」「業務経験が短い」「技術や
経理に強い」などの場合に成長率が高く、
一方 総資産利益率は「業務経験が長い」「技術や経理に強い」などの場合に有利
さが目立つ。 (いずれもトップの経理感覚は重要)
◎婿養子による経営というのは諸外国には無い仕組みで、純資産利益率でみると
創業者がトップ、次いで高いのが婿養子という結果が出ている。
本書で印象に残った中から幾つか抜粋
「 “最終的にはやはり親族” と思われるようでは、事業を伸ばせない。」
「肩書で自覚と覚悟が生まれることもある。」
「リーダーシップとは、権利や権限で押し付けることではなく、責任感の大きさ。」
「家訓…積善の家に余慶あり。不義にして富まず。」
この他、「同族企業は何故泥沼の対立が起きるか」「同族企業のガバナンス問題」
「後継者の7割が修羅場を経験」など、興味深い話が続く。