[内容]
性犯罪加害者の家族が連帯責任のように偏見や差別に苦しむ実状と、彼らをサポー
トする体制、及び家族会で人生を取り戻していく人達について書かれている。
副題『性犯罪と「加害者家族」』
[感想]
今年、教員グループによる女児盗撮画像の共有事件が大きなニュースとなり、巷で
は「何のために教員になったんだ?」 という呆れ声が上がった。
日本では加害者とその家族が同一視される傾向があり、特に世間から白眼視されが
ちなのが“性犯罪”だという。
しかし著者は「加害者家族も支援を必要とする存在である。」と言い、本書では著
者が実際に関わった、加害者とその家族についてのエピソードが多数紹介されてい
る。以下は、加害者家族に起きる典型的なものだ。
・犯人の家族だからと嫌がらせをされ、電話の着信音やチャイムの音に怯える日々。
・SNSで個人情報を晒されて、転校・転職・転居などを余儀なくされる。
・メディアの過熱報道やSNSのバッシングで、ウツになったり自殺する人もいる。
・経済的に困窮する。 ・再犯に怯える。
家族会は、立場によって其々思いが違うため「母親の会」「父親の会」「妻の会」の
3つのグループに分かれている。
妻は周囲から「夫に対して女性としてどうだったのか」と詰められ、母親は「育て
方が悪かったのでは」と詰められる。ちなみに父親の場合は何故か、加害当事者に
とって“不在”か“有害”なエピソードしか表出しないことが多いそうだ。
欧米では刑事事件で親が逮捕されると、加害者の子供達は(必ずでは無いが)心理
的問題や、攻撃性・多動傾向、引きこもりなどの問題行動を呈しやすくなることが
明らかにされており、加害者家族には“隠れた被害者”として積極的に支援が展開さ
れるという。本書では外国のそうした支援内容も紹介されている。
性犯罪を繰り返す人間の多くは共感性が低く、 “衝動制御障害” “行為依存”の側面が
あるという。
著者はまた、聞き取り調査の結果「性犯罪の本質は、自分の弱さを認めず、他人
を傷つけ、自らの優位性を確認し、自分よりも小さくて弱い対象を支配すること
で、その欲求を満たそうとすることである。」と分析。
その上で「病気だから仕方がない、という罪の免責にはならない。」「プログラム
に取り組む中で、それらを認め、手放していくことでやめ続けることが出来る。」
と訴える。(中には更生困難なサイコパスもいるが。)
「2026年に始まる“日本版DBS”の制度の下では、たとえ加害者が苗字を母親の旧
姓などに変えても、性犯罪歴のある人は子供に関わる仕事には就けなくなるよう
です。」…DBSに関してネットでは、プライバシーの侵害・職業選択の自由に反
するという意見もあって驚かされるが、多くの人が制度の実現を待ち望んでいる。
※日本版DBS=子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を確認することで、
子供たちを性犯罪から守り、再犯を防止するための制度。
本書ではこの他に
・遊び感覚で盗撮をする青少年達の、様々な実例とその心理。
・子供から子供への被害。
・加害者が知人であるため、被害者が報復を恐れて事件が表面化しないケース。等
一筋縄ではいかない問題にも言及している。