ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『ルポ海外「臓器売買の闇」』(読売新聞社会部取材班)

[内容]

読売新聞の記者達によって、日本のNPO法人による臓器売買の実態が暴かれた。

本書では、この事件の発覚から裁判に至る迄のプロセスが書かれている。

[感想]

読売新聞社会部の取材班約10名による、1年半かけた緻密な調査と取材。この事

件に関する一連の報道は、2023年度新聞協会賞を受賞。

 

取材の発端は、2022年のある日にこんな情報が入ったことだった。

「腎臓移植を希望する4人の日本人が、NPO法人の紹介でキルギスに渡り、1人

 は手術後に一時重篤、1人は現地で待機中に死亡、2人の手術は中止。」

 

法人の名前は『難病患者支援の会』。理事長のK氏(61才)によると、腎臓移植の

渡航先は始めの頃は殆どが中国で(当時ウィグル族の死刑囚・法輪功信者からの移

植が問題視されていた)少数だが米国やインドでも行われている。

 

しかし外国人の受け入れが厳しくなり、更にコロナで難しい状況となる。

その後の主な渡航先は、ベラルーシブルガリアキルギス、トルコ等で、ドナー

はその国の貧しい人達。日本からの患者は、殆どまともな設備も無い病院で杜撰な

手術を施され、術後すぐに帰国させられていた。

 

しかし日本に戻っても、海外で移植を受けた患者は、命に緊急性がある場合を除き

診察を拒まれることが多かった。理由は医師が臓器売買に関与したと疑われて、行

政処分が下ることを恐れたためだという。

 

本書では、海外での移植の具体的事例が多く取り上げられている。

例えばウズベキスタンでは生体移植は親族間にしか認められないため、ウクライナ

人ドナーの女性を日本人患者の親族に見せかけるため、偽造パスポートが用意され

ていた…等々。

 

ちなみに患者が支払う費用は2000万円前後で、ドナーの受け取る額は15000ドル

程度。臓器売買は、貧しい人からの搾取で成り立っていた。

 

本書では、患者・ドナー・ブローカーの他、国内外の医師や病院スタツフなどにも

取材を行っているが、臓器売買に関わっている人間には嘘や隠し事が多く(当然か)、

正に犯罪集団。その中でトルコ人コーディネーターの語った「世界中の臓器移植の

50%は、合法を装った虚偽の移植だ。」に、闇の深さを感じる。

 

新聞の一連の報道によって警視庁が秘かに動き出し、理事長は“無許可あっせん”の

容疑で逮捕された。しかし、裁判での判決を不服として控訴している。

 

この事件は国会にも取り上げられ、厚労省が海外での臓器移植の実態調査を行い、

移植学会・透析医学会など五学会が「海外臓器売買根絶」の共同声明を発表。

 

新聞の一連の報道内容は本書にも掲載されており、この他 “日本の臓器移植法” 

“2008年のイスタンブール宣言” “移植に関する法の不備” “日本のドナー不足“に

ついての解説と問題点の考察にも、多くの頁が割かれている。