ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『認知症・行方不明者1万人の衝撃』(NHK取材班)

[内容]

認知症による徘徊の実態と家族の苦しみ、警察や自治体の行方不明者捜索の実状と

問題点、及び解決策が述べられている。

[感想]

本書は2014年のNHKスペシャル番組を書籍化したもので、菊地寛賞を受賞。

 

全国の認知症の人と介護者を、400家族あまり取材。警察や自治体・介護施設など

にも取材を重ね、行方不明者の状況が多数紹介されている。その内容は想像を超え

る痛ましいもので、当事者達の辛さ苦しさがヒシヒシと伝わって来た。

 

放送当時の“認知症”行方不明者は約1万人。その後毎年増え続け、昨年警察に届け

のあったのは1万8121人。死亡者は491人で見つかっていない人は約250人。

これらは氷山の一角と見られ、また65才以上の約4人に1人が認知症とその予備軍

と言われている。

 

認知症患者が行方不明になった時、殆どの人が普段着で何も持たず、もし保護され

ても自分の名前すら言えないため、簡単には自宅に戻してあげられない。ちなみに

昨年亡くなっていた人の約8割は、“5キロ圏内”の近場で発見されている。

 

発見現場は、川、用水路、山林が半数で、民家の庭で凍死していた人もいた。鉄道

の事故も少なからずあって、鉄道会社から損害賠償を請求され裁判になったケースも。

行方不明者の中には長距離を移動していた人もいて、現在も身元不明のまま他県の

特別養護老人ホームで世話をされている人達がいるという。NHKの放送がきっかけ

で、7年ぶりに身元が分かって家族と再会できた女性の話には驚いた。

 

取材を始めて気付いたのは、行方不明の実態を正確に把握し、再発防止に取り組む

公的機関がどこにも無いことだったという。しかし取材班が調査を続けることによ

り、警察庁厚生労働省、全国の自治体が対策に乗り出し、厚労省都道府県警察

などのウェブサイトで“行方不明者情報”を見ることが出来る。

 

行方不明者の家族が自治体や施設に問い合わせても、“個人情報保護法”を理由に何

も教えてもらえないことがあるそうだ。

釧路はSOSネットワークの発祥の地で、臨機応変に対応して保護法の壁を乗り越え

ている。改正に尽力した職員の「個人情報の保護ばかりに縛られていて、命を救

えないのでは本末転倒だと思ったのです。」の言葉が素晴らしい。

 

徘徊が事故や行方不明という結果になった時、家族は皆「何故目を離したのか何故

すぐに警察に通報しなかったのか…。」と、一生後悔の念を引きずるという。

徘徊は繰り返されるため、警察に何度も探してもらうのは気が引ける、人に迷惑を

かけたくない…と考えるのは無理もないが、施設と違い一般の家庭では徹底した防

止策を取ることは難しい。事故を未然に防ぐには、家族だけで抱え込まないことと

早めに通報することが重要だそうだ。

 

老老介護+認認介護(介護する側も軽い認知症) ”…という夫婦も珍しくないという。

こうなるともう悲惨の一言で、優先的に手を差し伸べることは出来ないのだろうか。

いずれにせよ認知症の家族にとって、徘徊が精神的にも肉体的にも一番キツく、徐

々に心が削られていくというのは想像に難くない。

 

“玄関のセンサー” “GPSによる位置情報端末の活用” など、本書では家庭での

対策にも多くの頁が割かれており、これもとても参考になる内容だった。