[内容]
誰にも看取られずに亡くなった悲惨な遺体。そんな人達の部屋の後始末を1500件
以上請け負ってきた特殊清掃会社の社長が綴るノンフィクション。
[感想]
著者は現在もこの仕事を続けており、2020年に2冊目の本を出している。
病死・事故死・自殺・無理心中…死亡に至った原因は様々だ。
著者が仕事をする時の出で立ちは、首に大きな数珠、顔には防毒マスク。全身をビ
ニールのカッパ・ゴム手袋などで覆い、最後に粘着テープで封をする。
そこまで厳重にしなければならない程、部屋には死体に湧いたハエやウジがいっぱ
いで、目に染みる程の死臭と床下にまで浸透した血液と体液の異臭が染みついてい
る。現場で一番怖いのは感染症で、それらは目・鼻・口の粘膜から侵入してくる。
特殊清掃の7割が孤独死で、高齢者よりも50~60代の男性が多いそうだ。孤独死が
辛いのは、その死が悲しまれるどころか迷惑がられるところにもあるという。
悲惨な話が続く中で、違う意味でちょっと切ないケースを一つだけ。
「床にビニールシートを敷き、紙おむつを着用して首を吊っていた男性。死後1週
間経っていたが、その部屋は臭いも汚れも一切無かった。」
特殊清掃の手順も詳しく説明されている。意外だったのは、フローリングは体液が
広がるので、丸ごと外して捨てられる畳の方が片付けやすいということ。
著者は時間とお金をかけて、試行錯誤の末に特殊薬剤を作り上げており「私の主義
は1回で完璧な仕事をするという事。」という言葉からも、本気度が伝わってくる。
清掃を始める前には、必ずお清めをするという。最初は自分の為だったが、今では
死者に「お疲れ様でした。」と、言葉をかけるようになっているそうだ。
仕事柄よく、幽霊を見たことはありますか?と聞かれるそうだが、そういったこと
は全く無く、「神主さんや神様に気持ちの上で繋がっていられると思えることが、私
の心の支えになり、この仕事を続けていくことが出来るのです。」と話す。
小学生の時からグレていた…という著者の半生と、この仕事を始めた経緯や、軌道
に乗るまでの出来事も語られている。
色々な事情で大きな借金を背負っていたこと、信じていた人に裏切られて全てを無
くしたことがあったなど、正に波乱万丈の人生で、現場で床を擦りながら「なんで
俺はこんな事をしてるんだろう?」と悔しくて涙があふれたこともあったという。
特殊清掃の仕事を始めて何年目かのこと。亡くなった30代の息子さんの両親が、ア
パートの大家さんから怒鳴られ、何度も謝りながら一生懸命に掃除をしていた。
それを見た時、妹が8才で亡くなった時に泣き続けた両親の姿と重なり、又妹への
想いもあって、彼らのような人の役に立ちたいと本気で思うようになったそうだ。
事件現場の大家さんと遺族が揉めるケースは結構あるそうで、
「 (略)あなたは十分に悲しんでいるし、苦しんでいます。立派な対応もしてらっし
ゃいます。他人が迷惑な顔をしようと、恥じることはありません。」
著者のこの言葉に救われた遺族は多いのではないだろうか。