ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『ルポ特殊詐欺』(田崎基)

[内容]

特殊詐欺の実状と、若者達が詐欺に加担するようになった経緯、実行の手口、彼ら

は何故組織から抜け出せないのかを、綿密な調査と実行犯への取材によって解明。

[感想]

著者は神奈川新聞記者。

本書は末端の実行犯目線で書かれているため、恐いくらい犯行現場の臨場感がある。

 

特殊詐欺とは、オレオレ詐欺やキャッシュカード詐欺等、あらゆる手口で不特定多

数の者から現金等をだまし取る犯罪の総称。主にかけ子・受け子・出し子などの実

働部隊によって遂行され、彼らが“飛び”(被害金をかすめ取る)をしない為の見張りが

いることもある。ちなみに被害者の9割は、60才以上の高齢者だそう。

 

以前は、オフィスにかけ子が集まって騙しの電話を掛けるのが殆どだったが、芋づ

る式に逮捕者が増えたため、今はビジネスホテルや車などで、短期間の移動を繰り

返しながらの手法に変化している。

連絡手段も巧妙化し、かつてと異なるのは統括役はその場におらず、電話で次々と

指示を出してくる点だ。また、法改正により収入の道を断たれた暴力団が関与する

ようになったことで、強盗・傷害・殺人未遂など凶悪化に拍車がかかっている。

 

末端の出し子や受け子を逮捕しても、彼らは皆捨て駒なので中々主犯にはたどり着

けない。そもそも実行役の人間は指示役の顔を知らず、実行仲間も犯行当日が初対

面であることが殆どだという。

 

本書では様々なケースが取り上げられているが、末端の実行犯に共通しているの

は、「手っ取り早く稼ぎたい」という短絡思考で、高額な報酬に釣られてSNS

どで闇バイト募集に応募。その時に問われるまま自分の個人情報を伝えてしまい、

そのために抜けることもままならない。やめたいと言おうものならば、家族を殺

すなどと脅されズルズルと犯行を重ねて堕ちていく。

 

応募の動機で多いのは、ギャンブルや身の丈に合わない生活による借金、非行少年

上がりの若者が軽い気持ちで、あるいは目の前のピンチから逃れる為にうまい話に

飛びついた…などで、中には事業の資金繰りに困って…などという人間もいる。

 

予想外に多いのが、軽度の知的障害や発達障害、恵まれない生い立ちの若者で、身

近な人間から脅されたり、いいように利用される様子に胸が痛んだ。

傷害があることを見過ごされたまま、社会に出て行き詰まる人は少なくないそうで、

ネットでも「加害者であると同時に犠牲者でもある人間をこれ以上増やさないため

に、当局は喫緊の課題として取り組むべき。」といった意見が見られた。

 

それにしても脅しの方法がえげつない。組織が下層の者を使い、その下層が更に弱

い者を使い倒す…これこそが反社会的集団の典型的な姿で、下記はその一例。

「市内を転々とさせられ、テレグラムを通じて昼夜関係なく四六時中連絡が入り、

着信に出なかったり、犯罪の実行を断ろうとする度に脅され犯行を強いられる。」

 

捕まった人達は例外なく後悔の念に駆られるが、「お金を運んだだけ」という弁解

は通用せず、詐欺行為の一端を担ったということで、刑法第60条により“共同正犯”

として重い罰が下されている。

 

著者は富む高齢者と貧しい若者の格差社会の問題点も指摘し「高齢者に啓発するの

と同じように、若者に対しても楽して稼げる謳い文句の危険性を説く必要がある。」

と訴えている。