[内容]
7人の親による共著で、コロナ禍の時に障害のある子達は、病院や施設をはじめ社
会からどのように扱われどんな生活をしていたか、親の思いと共に語られている。
[感想]
児玉真美氏は、一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事。
コロナの大流行時、重い障害を抱えた人達は様々なサービスの休止と利用自粛を強
いられた。病院や施設から拒否されて介護も看護も全て家庭内で担わなければなら
ない事態に陥った人も多く、結果、以下の3つが切実な問題として浮き彫りになった。
- 障害者に対する医療と福祉の“家族依存”
- 医療機関にとって、障害者は余計な手間がかかるという“迷惑な患者問題”
- 病院と施設における“面会制限”
本書では様々な具体例が語られており、その中から幾つか抜粋。
<自宅介護の人の場合>
・リハビリ、就労支援、ショートステイ、介護士による世話などの打ち切り。
・マスクをつけられない人は、障害が理由でも受診や検査を拒否された。
・家族全員が感染したが、診療も入院も拒否されて高熱の母親が子供を看病。
<入院・入所していた人の場合>
・様々な人が出入りしている中、家族だけが面会禁止の処置を取られた。
・グループホームで陽性者が出た途端ホームが閉鎖され、全員が家に戻された。
・障害児が緊急入院した時に付き添いの交代は許されず、また介助や看護の全てを
看護師ではなく母親の仕事とされた。
日本では6人に1人が多重介護者で、ケアをする人は平時でも厳しい状況の中で頑張
っているのだが、コロナ禍で孤立無援となった。
外出が出来ないため不自由な身体で怒りわめく子供、兄弟児の世話も自分のことも
ままならず、徐々にメンタルをやられていく母親…等々、彼らは何故どこからも放
っておかれたのか。
これには、コロナ以前から「脱施設」「地域移行」「共生社会」という美名のもと
に進められてきた国の施策と、人々の心の根柢にある「有事において障害のある
人に十分な配慮が出来ないのは仕方ない。」という差別意識が大きく影響している
という。ちなみに行政は、障害児者の感染者数はカウントしておらず、コロナ禍
によって、以前からあった様々な問題が露呈している。
以下は行政、病院、施設へ向けて出された、母親達からの要望の一部だ。
「病院・保健センターの職員が障害を理解しておらず、対応が違う上に手間も日数
もかかり過ぎていた。」
「全てのエッセンシャルワーカーの処遇改善と、適正な人員配置の見直しが必要。」
「障害者は重症化しやすいので、この機会に体制を整えてほしい。」
他にも行政・医療・福祉現場に対する厳しい意見が続き、当事者の強い思いが伝わ
ってきたが、これに対して現場の職員からは、少なからぬ反発もあるという。
コロナ禍の間は地域によって対応に大きな差があったが、2021年に「医療的ケア児
支援法」(通称)が施行され、「少しずつ前に進めたら…。」と期待の声が上がっている。
本書ではこの他、英国の現状、現場の看護師の声、「日本重症心身障害福祉協会」の
アンケート結果、本著作のメンバー達による『その後を語り合う』など、様々な角度
からの実状・意見が紹介されており、巻末に愛知県の『新型コロナ禍での障がいのあ
る人の生活実態調査』(全50数頁)が掲載されている。