[内容]
ある児童相談所のワーカー達に密着取材して、現場の最前線を綴ったルポ。
[感想]
本書は連載記事に加筆、インタビューを加えたもので、日本記者クラブ賞受賞。
敢えて詳しくは書かないが、本書には虐待された子供達の具体例が沢山挙げられて
いる。日本で虐待死する子供は、心中事件も含めると毎年100人近くいるそうだが、
無力な子供を虐待死させても量刑は驚くほど軽い。
児童相談所(児相)が関わっていたのに事件が起きた…という報道がある度に、何故
救えなかったのかと、怒りの矛先は加害者(半数は実母)だけではなく児相にも向け
られる。本書で児相のワーカーが、子供を助けようと日夜頑張る姿と疲弊している
様子を読んで、彼らの大変さと苦悩がいっぱい伝わってきた。しかし同時に、制度
の面で解決すべき問題の多いことにも驚かされた。
第6章の『現場からの声』は、直接現場と関わり続けてきた知事、NPO法人の理
事長、子供相談センター所長へのインタビューと、5名のワーカーによる座談会
となっており、どの人の意見も率直で厳しく、とても興味深い内容だった。
児童相談に関わるトップが共通して訴えているのは、“人員の不足、予算の不足、
専門の職員養成の必要性”だ。
児相の職員が子供を保護しようとすると、激しく抵抗する親が沢山いるため、入所
に同意しない場合は、家庭裁判所に申し立てるケースも出てくる。又、警察や弁護
士が関わると大人しくなる人が多いが、今はまだ全国的な制度として確立しておら
ず、人員も足りていない状況だという。
「児童相談所が対応する子供達は、多動傾向のある子供が少なくなく、発達障害の
ある子も珍しくない。保護者自身が知的障害、精神疾患、精神不安定、経済的困
窮など問題を抱えていることも少なくない。」
これを読んで、素人の私でさえ思う。3~4年で職場を移動になる職員が、熱意だけ
で対応するには限度があるだろう。資格がある人がいても人手不足では手が回らな
いだろう…と。
あと、保育所、学校、区役所、保健所など、子供達に係る機関がもっと積極的に関
わって、其々が密接につながる仕組みづくりが必要なことと、地域の見守りの大切
さも挙げられている。ちなみに保護者との関係悪化を気にして、すぐには通告して
こない保育園は珍しくないそうだ。
以下に印象深かったものを3つ抜粋。
◎子供の死をめぐっては、欧米ではCDRと呼ばれる子供の死を登録・検証する制度
が定着しているが、日本では死亡原因によって省庁が縦割りで扱うため不十分。
◎人を増やすのは首長の決断。首長の権限はとても大きく、知事や市長次第で職員
を増やすなど、現場は大きく変化する。
◎一時保護所に保護された子供は学校に通えず、学習権を保障されていない。
本書ではこの他、一時保護・施設入所、里親制度、特別養子縁組についても詳しく
解説されている。
ところで児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合は、児童福祉法に基づき
全ての国民に通告する義務が定められており、誰にとっても無関係な話ではない。