[内容]
ゴリラ研究の第一人者と動物言語学者が、最新の知見を深掘りした対談。
[感想]
(山極寿一)…多数の役職を経て、現在は総合地球環境学研究所所長。
(鈴木俊貴)…東京大学先端科学技術研究センター准教授。
山極氏はアフリカで長年、野生のゴリラと共に過ごして生態を解明し、対する鈴
木氏は年の半分以上を森で暮らして、シジュウカラの言葉を解明。
そんな2人の対談は予想以上に面白く、驚きが一杯だった。
沢山の動物が登場するが、各章の最後に対話の内容が“まとめ”として整理されて
おり、また豊富な写真とイラストがイメージ化を助けてくれる。
元々動物は、鳴き声でコミュニケーションをとる生き物だが、シジュウカラが特殊
なのは、“20種以上の鳴き方があり、それを組み合わせて言葉のように使っている”
点だという。この鳥はまた、タカやヘビなど見つけた天敵によって鳴き声を変えて
仲間に警告し、時には故意に嘘をつくこともあるとか。
本書の中から3点だけ抜粋。
◎マンドリルのオスは群れのリーダーになった途端、顔の色がとても鮮やかになる。
(社会的な状況や地位に合わせて姿形が変わる霊長類は多い。)
◎犬は類人猿よりも認知レベルが人間に近く、例えば人が指さした方を向くことが
出来るなど、限られた動物しか持たない能力を持っている。
◎冬になるとシジュウカラはコガラと混群する。種が別だと“言葉”も違うのだが、
シジュウカラはコガラの言葉も理解している。
他にも頭の良い動物が沢山登場する。
カンジという名のボノボは、以前テレビで紹介されたことがあるので、覚えている
人も多いと思うが、彼は「バナナを冷蔵庫に入れなさい。」などといった文章を理
解し、言われた通りに行動することが出来た。
私が一番興味を持ったのは、アレックスという名のヨーム(大型のインコ)だ。
図形を並べて「緑色でハート形をしたものを選びなさい。」と言うと、ちゃんと選
べるというのだから驚きだ。ここまではないが、YouTubeには利口な鳥が沢山アッ
プされていて、彼らの可愛さと頭の良さには舌を巻くこともしょっちゅうだ。
動物と人間の言葉の一番の違いは、「今」「ここ」にないものを語れるかどうかだ
という。しかしこんな衝撃的な話もあった。
「手話を覚えたゴリラが、捕らえられた時の様子を手話で飼育員に語り始めた。
『お母さんは密猟者に首を切られて殺されて、僕は手足を縛られて、棒にぶら下
げて連れてこられた。』」
山極氏はこう明言する。
「動物研究から人の本性が見えてくる。」
「動物たちは人間とは違う能力を使って、それぞれに豊かな環境で暮らしてるので
あって、けっして人間より劣っているわけではない。」
本書ではこの他にも、動物たちがどのようにして情報を伝え合うのか、彼らが歌い
踊る様子など多くの事例を挙げて解説が続き、最終章では進化の歴史、人間の言語
との比較、AIや仮想空間が人間の未来に与える影響などについて語られている。