[内容]
多くの患者を看取ってきた医師が、お迎え現象を通して終末期医療と死生観に
について考え、人としてあるべき姿を助言。副題『終末期医療と看取りのいま』
[感想]
著者は、麻酔科から緩和ケアに転向した医師。
“お迎え現象”とは、最期の時に患者の前に死別した親族などが現れる現象のこと。
これは長い間、機能不全による意識障害(せん妄)と診断され、治療の対象だった。
しかし最近は、お迎え現象や死後の世界を認める科学者や医師が増えており、著者
も医療現場で直にお迎え現象のことを知ってからは、これをせん妄とみなし薬によ
って意識を落とすことには反対している。
本書では著者が、患者やその家族から聞いたお迎え現象の他、多くの臨終の場面が
紹介されている。どれも具体的に語られていて、半数以上が「数日前から死別した
家族や知人が現れる」というものだが、中にはペットや、幼い時に亡くなった息子
が成人した姿で迎えに来てくれたという人も。
お迎え現象を語る人達は皆、死を受け容れて心穏やかに死の準備を始めるという。
中には死は無になることと考え、末期になっても病気を治す事だけを考えている人
もいるが、一人寂しく死ぬわけではないことを知ると、本人だけではなく周りの家
族も安心して看取ることが出来るようになるそうだ。
つい最近まで病院では、「もう駄目だ」となってからようやく家族が病室に入って
対面が許されるという状態で、治療の決定権は本人にも家族にも無い“お任せ医療”
が当たり前だった。しかし今は、患者が癌と診断された早期から緩和ケアを受ける
ことが出来るそうで、著者は、最期まで医療任せにしてはいけないと訴える。
以下に、考えさせられたことを一部抜粋。
・体がもう栄養を必要としなくなった時、点滴や胃婁は全て負担になってしまい、
却って何もしない方が本人も辛くなく、長く頑張れることも多い。
・治療医の中には、終末期であっても無意味な治療を続ける人がいるが、実は本人
はそれを望んでいなくても、周りに気を遣って自分の望む死に方を選べない…そ
ういう人は意外にいる。
・悲しみや死の恐怖に耐えられずに、介護した人が自殺を選ぶというケースも少
なくない。患者が苦しみを可能な限り緩和するというのは、自分のためでもあ
り、周囲への思いやりでもある。
最終章で著者はこう書いている。
「人は死んですべての役割から解放されるのではなく、死んだ後にも役割がある。
それは残されたものに生きる力を与えること。先祖となって家族や家を守ってい
く存在になることです。」
私も自分が死んだ後は先祖の端くれとして、母が私にしてくれたように子や孫を見
守っていきたいと願っている。