[内容]
『何をやっても-(略)』は週刊誌に連載されたエッセイがまとめられたもの。
[感想]
著者は産婦人科医を経験してから、6年後に精神科医に転向した変わり種。
以前このブログで、著者の『病んだ家族、散乱した室内』の感想を書いたが、本書
(2冊)も建前ではなく本音で語られており、興味深く読むことが出来た。
本書の紹介文に「生きづらさに悩む人必読の書」とあったが、癒しを得る方法が書
かれているわけではなく、精神科医として多くの人達の症例を診てきた見解が述べ
られている。
重篤な精神病の人はあまり登場せず、著者は「患者さんは自分と大差がない。ちっ
ぽけなわだかまりや、いじましい自尊心、余裕を欠くがゆえの被害意識といったも
のに捕らわれて足掻く人たちばかりなのである。」と語る。
内容は多方面に渡っており、精神科医の書くものだけあって「他人を非難し、憎む
ことを生きがいにしてる人は予想外に多い。」など、普通に暮らしている分にはあ
まり出会う事の無いタイプの人間の、心の闇を感じさせるものも多かった。
「易者レベルの観相学は、少なくとも精神科医療には利用できない。」とあったの
で、これは人相学に拘る人への警鐘なのか、それとも著者流のジョークか?と思っ
ていたら、その後『鬱屈精神科医、占いにすがる』という本を出していた。
しかし占いについて書いているのは僅かで、著者も言うようにこちらの本は私小説
に近いかもしれない。母親との確執や仕事など、諸々に対する自分の感情を真面目
に赤裸々に書いており、ここ迄自分の心や手の内をさらして仕事がしづらくならな
いかしら…と余計な心配をしてしまったが、独特の感性と文章の上手さで思わずク
スッと笑う場面も多い。
ここからは、私の知人の話を少し。
何年か前、心療内科に通っていた知人が病院帰りに私の家に来て、その日の診察で
起きた事を話し始めた。いつもはよく話を聞いてくれる主治医が、突然「そんなん
だから、いつ迄経っても治らないんだ!」と、彼女を怒りつけたのだという。
本人は「いつも同じ愚痴ばかり言ってる私が悪い。」と涙ぐんでいたが、 私は、
“医者も人間”ではあるが、診療費をとっているプロが2人きりの診察室で、心の弱
ってる患者相手にそんな態度をとるのは言語道断だと思った。
彼女はその日以来そこに通うのをやめたが、立ち直る迄に結構時間がかかった。
精神科医に限らず、心に関わる事を相談する時はこちらも、慎重に相手の人間性を
見極める必要がありそうだ。