[内容]
ロシアと西側との間でふらついて見えるインドの、歴史・政治・外交・安全保障
他を考察。副題『未来大国の虚と実』
[感想]
著者は防衛大学教授。インド外交や南アジアの国際関係に関する著書多数。
インドはクアッド(日米豪印戦略対話)の一員として西側への傾斜を強めてきたが、
2022年国連に提出された“ロシアのウクライナ侵攻非難決議案”を棄権して、世界を
驚かせた。更にこの後、ロシア産原油の爆買いまでしている。
実はインドとロシアは昔から相互補完的な関係で、中国の脅威もあってロシアを敵
に回したくはないと考えての決断と見られているが、著者は「元々インドは実利主
義の国であり、インドはこれからも特定の国と同盟を結ぶ考えは持っていないだろ
う。」と見る。この言葉通り、インドは多くの国と“戦略的パートナーシップ”を推
し進めており、本書ではG20他様々なサミットの内容と、インドがそれらに参加す
る意図が解説されている。
インドは18世紀以降イギリスの植民地となり、1947年に独立。各州に中央政府と
は別に政府があり大臣もいる。核保有国で軍事力は世界第4位。
多民族・多宗教国家で、承認されている言語は21。人口の8割がヒンドゥー教徒だ。
ガンジーの非暴力が有名で、世界最大の民主主義国と言われるが、カースト制度と
貧富の格差により人権侵害が横行。モディ政権下の現在、メディアへの支配、市民
団体への弾圧、学問や宗教の自由への侵害が深刻化していると言われる。
〈インドと中国の関係〉
インド・中国間の国境の大半が未解決の“実行支配線”状態にあり、中国から何度も
挑発行為を受けていることと、周辺国に対する上から目線の中国の海洋・大陸進出
に、インドは強い警戒心を抱いている。その一方で中国との経済面での繋がりが不
可欠なため、中国への対応は今後も慎重にならざるを得ない状況であるとか。
ちなみにパキスタンとは敵対関係で、昔から何度も紛争が起きている。
2023年に、インドの人口が中国を抜いて世界一になった。
現在の人口は14億5千万人で、その半分が30歳未満。IT大国、アジア3位の経済大
国で、今後世界で最も急成長する国と見込まれている。
インドは中国の“債務の罠”を警戒しており、日本に期待しているのは中国に依存し
ないようなインフラを提供してくれること。実際日本は既に、2017年から日印フォ
ーラムを発足させ、道路網などの整備を支援しているそうだ。
※債務の罠=中国が建設したスリランカの港が、借金のカタに中国に取られたこと
などを指す。
一方インドに進出する日系企業は2018年頃から頭打ちの様相で、うまくいかず撤退
した企業も出ているとか。原因はカーストの存在と労働や消費に対する考え方の違
い、インフラの未整備などで、著者はそれでも「インドがサプライチェーンの脱中
国化を図ろうとしている今、我々にも食い込むチャンスは十分にある。」と言う。
更に「インドが万が一、中国に飲み込まれる、あるいは抱き込まれるような事態に
なれば、“自由で開かれたインド太平洋”リベラルな秩序は崩壊する。そうならない
ために我々はインドとどう付き合っていくべきなのか。」と問題提起する。
先月トランプ氏がアメリカの大統領として返り咲き、次々と物議をかもしているが、
果たしてこれに対してインドはどう出るか…。