[内容]
EUにおける移民・難民政策の経緯と問題点の解説、及び日本ヘの警告。
[感想]
著者はドイツ在住の音楽家、作家。
2011年~2019年のドイツでの出来事を重点的に、ヨーロッパの移民・難民の現実
と、そのためにドイツとEUの間で生じた軋轢について語っている。
EUでは2011年頃には既に、難民問題が深刻になっていた。難民は密航斡旋業者に
大金を払い、NGOの大型船に救助されることを頼みに、小さな船にすし詰めにな
って次々と地中海に乗り出して来たが、遭難で溺死する人も多かった。
2015年、EU諸国に劣悪な環境で滞留していたアフリカや中東からの難民が、ドイ
ツのメルケル首相の主導で大挙してドイツに押し寄せた。その数、約89万人。
しかしこの時、難民を自己申告の通りに受け入れた為に、経済難民やイスラム過激
主義者、犯罪組織の者まで入国してきて、ドイツの治安はどんどん乱れていった。
対してEU各国は、膨大な難民が自国になだれ込むことを恐れて、次々と国境を閉
鎖していき、イギリスがEUを離脱した原因の一つは移民の問題だと言われている。
以前テレビの報道番組で、大勢のドイツ国民が難民を拍手で迎え入れる様子を見た
時は、私も単純に“難民を救うドイツ”の凄さを、感嘆の思いで眺めていたものだ。
しかし著者はこう指摘する。「一般のドイツ人国民は人道のために難民を受け入れ
ているつもりでも、産業界の狙いは別のところにある。」
ドイツでは今、あらゆる分野で若い労働力が不足している。つまり難民を受け入れ
る本音は、安い労働力が欲しいからで、裏を返せば使い物にならない難民は欲しく
ない。いずれにしても、ドイツ社会は外国人の労働力なしには一日たりとも機能し
ない程彼らに依存しているという。
難民によるトラブルの事例が沢山挙げられている。
“イスラムの無差別テロ” “大量婦女暴行事件” “警察も入りたがらない無法地帯
の出現“ 等々で、国籍が変わっても難民のアイデンティティは変わらないため自
国の文化や伝統が壊れていくのも問題だという。
著者は日本は既に移民大国であり、難民問題は日本にとっても決して対岸の火事
ではないとして、「共同生活を破壊している外国人の軽犯罪を大目にみているう
ちに、収拾がつかなくなる。」「外国人への日本国籍の付与は慎重にした方がよ
い。」と警告。
確かに最近、在住外国人の問題行動や犯罪の記事を目にすることが多くなった。
2019年に日本の入国管理法が改正され「特定分野において、新たに技能実習生以
外で外国人の雇用が可能となった。」とあるので、問題は更に増えると思われる。
しかし彼らの多くは、人手不足のため「日本で働いて下さい」というこちらから
の呼びかけに応じてやって来た人達で、無理やり押しかけて来たわけではない。
差別に繋がるような不当な扱いは、更に関係をこじらせることになる。
ただ、一部のクルド人と地域住民との軋轢など、看過出来ない事件が増えている
という現実もある。それに対してネットでは、彼らを支援する側と反対する側の
様々な意見が見られ、国の対応のマズさを指摘する人も多い。
著者の言うように「治安の乱れや悪化に用心を怠ってはならない。」というのは
当然で、迷惑行為と人道問題を一緒くたにして擁護するのは違うと思うのだが。
本書では他に、EUの分裂、国境問題、各国の難民の扱い、難民に対する福祉費の
増大…等が詳しく解説されており、アフリカの難民事情についても多くの頁が割
かれている。