ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『体験格差』(今井悠介) 

[内容]

子供時代に多種多様な体験をさせてもらえる子と、させてもらえない子の現実、

及びそれが子供に与える影響を考察。

[感想]

著者は、生活困窮家庭の子供の学びを支援する公益社団法人の代表。

 

習い事や旅行など子供時代の様々な体験は、生まれによって格差があり連鎖する

という。そしてそれは、子供の成長や将来に大きく影響するとも。

 

本書は独自に行った全国調査の結果を基に、子供の“体験格差”の実態を以下の5種

に分けて 解説。

①放課後の習い事 ②クラブ活動 ③キャンプや旅行の参加

④お祭りなどの地域行事 ⑤スポーツ観戦や博物館など教育施設での体験。

 

体験格差の最も大きい原因は親の年収の違いで、低所得家庭の約3人に1人は、過去

1年間での“体験”がゼロの状態にあるという。又、送迎や付き添いが出来ないとい

う“時間的理由”も経済的理由に匹敵する割合となっている。

貧困とはそもそも選択肢が無いということで、町内のお祭りにさえ格差は見られる

という指摘には、まさかそこまで?…と驚きを覚えた。

 

巷には無料で提供されている色々なイベントがあるじゃないか、という意見もある

が、皆それぞれに事情があるので、それを親の自己責任とは言えないと著者は言う。

 

第二部の『それぞれの体験格差』では10の事例が紹介されており、そこから様々な

ことが見えてくる。

 

・活動中は親がその場に居ないといけない…というものが多く、それがネックに。

・兄弟に障害のある子がいる場合、その子を家に置いて参加することは出来ない。

・親の体験ゼロの場合、子供の体験もゼロになる割合が高い。

・マイノリティの子供が直面する壁がある。              等々

 

下記の2つは「“体験”への十分な機会が得られなかった子供達から、相対的に奪われ

ているのは何か。」という問いに対しての答えの一部。

・他の子供達に出来ていることが、自分には出来ていないという剝奪感。

・中長期的な成長に様々な影響が予想される“社会情動的スキル”を伸ばす機会。

※社会情動的スキル=感情のコントロール、他者との協働、目標の達成といった個

   人の一生を通じて社会・経済的成果に重要な影響を与えるような個人の能力。

 

他にも幾つか、子供時代の様々な経験による成果や影響について挙げられている。

・家庭や学校の関係性だけではない、色々な他者との繋がりを育む機会である。

・体験の場は、不登校など社会と繋がることに。

・昨今、学生時代の活動や経験も重視される入試制度が広がりつつある。  等

 

最終章ではすべての子に“体験”の機会を届ける方法として、著者が代表を務める社

団法人の活動内容と共に、幾つかの案が提示されている。

 

「体験は必需品であり贅沢品ではない」…著者の言うように出来る事は限られるか

も知れないが、少なくとも小1の子が「サッカーがしたいんです。」と泣かずにす

む社会になるよう、周りのサポートや支援は必要だと思う。