ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『ガザとは何か』(岡真理)

[内容]

本書はパレスチナに関する緊急講演の内容に、加筆修正されたもの。

[感想]

著者は 京都大学名誉教授。パレスチナ寄りと言われる著者の、日本のメディア

とは違った目線の解説は、あの衝撃的なキャッチコピー「僕のお父さんは桃太郎

というやつに殺されました。」を思い出させるものだった。

 

2023年10月7日、ハマスイスラエルキブツと野外音楽祭を襲撃。大勢が殺害

されたうえ、251人が人質として連れ去られた。

 

著者は、マスコミでは民間人が殺されたことばかり強調されているが…と、次の

ように話す。「まず、彼らはガザの周辺にある12のイスラエルの軍事基地を占拠

しました。そこにいたイスラエル兵を捕虜にして、その後イスラエル軍と交戦に

なり、基地にいた戦闘員たちは全員殺されています。」

「民間人を巻き込む作戦の是非は厳しく問われなければいけないが、戦争犯罪

双方に認められ、イスラエルの方が圧倒的である。」とも。

 

以下は今回の事が勃発する前の、イスラエルパレスチナの略歴。

 

イスラエル」…第二次大戦後に英国がパレスチナ統治を放棄し、国連がパレス

  チナを2つに分割。そこにアラブとユダヤの2つの国家を創る事を可決したこ

  とによってできた国。(シオニズムの入植は19世紀末から既に始まっていた)

 

パレスチナ」…大戦後のイスラエル建国時に、第一次中東戦争が勃発。この時

  70万人がパレスチナを追われて難民となる。 1993年にイスラエルPLO

 (パレスチナ解放機構)の間で交わされた合意に基づき、ヨルダン川西岸地区

  とガザ地区が共に「パレスチナ自治区」となる。

 

中東戦争はその後も繰り返され(四次まで分類されている)、その度にパレスチナ

大きなダメージを受けてきた。他にも住民による大規模なデモなど、本書にはその

時々の戦闘内容と被害状況が詳しく書かれている。

 

イスラエルの建国には、ホロコーストなど世界中で迫害され続けてきたユダヤ人の

やるせない思いがあるが、だからと言って力づくで故郷を追われたパレスチナ人が

納得できる筈がない。

 

第一次世界大戦オスマン帝国が敗戦した時以来、英国はパレスチナ地域の統治

と分割に関わっており、その2枚舌外交 が衝突の元になっているとも言われている。

 

著者は「アメリカもEU四か国も、今回のガザ攻撃に賛同し、アメリカに至っては

これを支援している。イスラエルの行為を是認する欧米各国は、自分たちの歴史的

犯罪の代償をアラブ人に払わせている。」と強く批判。

 

ガザの人口は二百数十万人。住民の7割は1948年に難民となってやってきた人達と

その子孫で、65%が24歳以下で平均年齢は18歳。40%は14歳以下の子供だという。

 

ガザ地区は2007年から、イスラエルによって壁やフェンスに囲まれた完全封鎖状態

にあり、産業基盤は破壊。8割の世帯が食料援助に頼らざるを得ない状態で、人や

モノの厳しい封鎖が続いていたことから「天井のない監獄」とよばれている。

 

ハマスについても多くの頁が割かれている。「ハマスというのは占領された祖国の

解放を目指す運動組織で、2006年のパレスチナ自治評議会の選挙では、定数132議

席のうち半数を超える74議席を獲得した。」等々。 以下はハマス側の主張。

「封鎖解除無き停戦はいらない。それは私たちに生きながら死ねというに等しい。」

 

エルサレムの存在も大きい。エルサレムは、ユダヤ教キリスト教イスラム

の3つにとっては重要な聖地だ。其々がこの地を自分達の領土にと願っている。

 

著者は言う。「今ガザで起きていることは、イスラエルによるジェノサイド(大量殺

戮)に他ならない。」…これは世界中同じ認識で、国連を始め各国で抗議活動が続い

ている。