[内容]
名もなきアフリカの人々にインタビューを重ねた、11編のノンフィクション。
[感想]
本書は著者が新聞社のアフリカ特派員時代に、5年半をかけて取材したもので、
開高健ノンフィクション賞を受賞。著者の心の動きもきめ細かに綴られており、
随筆に近い。
アフリカと聞くと、殆どの人が搾取、極貧、援助、治安の悪さをイメージする。
しかし著者は、取材に行く時は出来るだけ庶民の乗るバスや車を利用し、アフリ
カ南部の人達の日常や本音と接するうちに、徐々に先入観が崩れ彼らの違った面
が見えてきたという。
1994年に「ハゲワシと少女」という写真でピュリッツアー賞を受賞したカメラマ
ンが、「撮影の前になぜ少女を救おうとしなかったのか」と猛批判されて自殺した。
実は私もこの写真を見た時に同じ感想を持ったのだが、その時の撮影に同行してい
た男性が、著者に真相を話してくれた。
「母親がそばにいて、ポンと地面にちょっと子供を置いたんだ。」ちなみにハゲワ
シはすぐ飛び去り、その後少女は歩けるまで回復したという。これは衝撃だった。
南アフリカでは1991年にアパルトヘイトが廃止されたが、その時の混乱と暴動に
より、無抵抗の白人3人が黒人警官に撃ち殺されるという事件が起きた。
“真実和解委員会”は、どの国においても平和時の裁判とは全く別物だが、警官が
免責となったことには、遺族でなくとも理不尽を感じずにはいられなかった。
キューバ革命の英雄チェ・ゲバラが、アフリカ革命を志し、結局“アフリカの歴史
にかすり傷一つ残すことも出来ずに撤退”した経緯と、その後のルワンダでの大虐
殺についても詳しく語られている。本書にはこの他にも、アフリカについて私達が
知らない事、考えさせられる事が色々述べられており、下記はその一部。
◎「コンゴでもシエラレオネでもアンゴラと同じく、ダイヤが内戦を、そして本来
なら早々に金(キン)が無くなり終わっている筈の戦争の延命を手伝っている。」
◎「アフリカには想像も出来ないような金持ちが多数いる。そしてアフリカに降り
注がれる援助金の多くは少数の特権階級の懐に消えてしまう。」
◎「エボラ出血熱で沢山の人が死んでいく中、先進国ではこの病について詳しく報
道されるが、当の本人達にはこの病の実態は何も知らされていない。」
◎「アフリカの民族は多種多様で、黒人人同士でも民族間の差別があり、皮膚の色
が濃いことも差別の原因となる。」
様々な人物が登場するが、その中でもアパルトヘイト時代に金鉱山で働いてきた老
人の言葉が印象的だ。著者は彼らを“会社側から搾取され、酷い環境で働く犠牲者”
と思って見ていたが、老人はこう反論する。
「仕事を持てることが、我々には幸せだったんです。奴隷なんかじゃありません。
そんな風に考えるのは間違ってます。」
現在に至るアフリカの歴史については本文に詳しいが、巻末に「もっとこの本の背
景を理解するために」と題した、アパルトヘイトや内戦などについての注釈が付い
ている。また、計8頁にわたる巻頭の写真には「ハゲワシと少女」も載っている。
ちなみにタイトルの「絵はがきにされた少年」は、昔白人が撮影したもので、今は
老人となった少年は、こんな昔の時代の自分を見れるなんてと喜んでいたそうだ。