[内容]
前半は老年症候群という概念を用いての説明で、後半は家族や医療者へ向けた
解説・アドバイスとなっている。 副題は『超高齢社会を生きる』
[感想]
著者はアメリカで高齢者医療を学び、その後日本で老年医学専門医として活躍。
以前知人が「加齢、加齢って、そんな診断なら私でも出来る。」と笑っていた
ことがあったが、私も最近は、医者に症状の原因を聞いた時に具体的な説明が
無く、ただ「加齢ですね。」と言われることが増えた。
その点本書は、病気の原因・症状・薬の副作用など、文献・統計・実例を用い
て具体的に説明されており、老年医学には“包括的高齢者評価”というものが
とても大切だということを理解させてくれる。
80~90代の高齢者には、効果に乏しく副作用のある薬や苦痛の伴うリハビリを
行うよりも、出来るだけ入院は避けて自宅で現状を維持しながら、快適さを保
つ治療や介護をするのが良いという。
日本では大腿骨の頸部骨折をする人が年間12万人もいるそうで、その内1割は
1年以内に亡くなっているとか。老人にとって転倒ほど日常的で、しかも患者
へのダメ-ジが強いものはないそうで、その原因の一つとして降圧剤など薬の
副作用の可能性もあげられていて驚いた(私は20年前から降圧剤を服用)。
まあ私の転倒はどれも明らかに不注意が原因だったので、体を動かす時は慎重
を心掛けたい。
「日本の病院は診療科ごとの縦割りになっている為、複数の病や慢性疾患を抱
えている高齢患者さんに十分に対処できない」
これは私も実感してきたが、6年前すぐ近所に民間の総合病院が出来、今はそこ
に通っているので、どの科に行っても自分の情報が共有されていて有難い。
「愛する人の安らかな最期やキレイな体が遺族の悲嘆を軽減する」
これはその通りだと思う。本書では患者の立場の人に対してだけではなく、家
族や医療者に対しても、老人ホームの現場に直接関わる医師として踏み込んだ
思いやりのある提案・指導がされており、色々と勉強になった。