ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『第三世界の主役「中東」』(石田和靖)

[内容]

著者がビジネスを通して見てきた、中東の発展の様子と未来についての考察。

副題『日本人が知らない本当の国際情勢』

[感想]

著者は会計事務所勤務時代に、中東や東南アジアの外国人経営者の法人を担当。

現在は海外のビジネス・投資及び国際理解教育に関するメディアを企画・運営。

 

中東と聞いて私が思い浮かべるのは、現在進行中のハマスイスラエルの戦闘。

あとは「イギリスの“3枚舌外交”」「石油で大金持ちになった地域」「アラブの

春(2010年)」程度だったので、本書の内容には驚かされることが多かった。

 

中東は、アジアとヨーロッパとアフリカ、この3つの大陸のつなぎ目にあるため

商業が栄えてきたが争いも絶えなかった。しかし石油の発見で大きな変化が訪れ、

その後の中東の近代化には目覚ましいものがあった。

 

UAE(アラブ首長国連邦)は、ご承知のように7つの首長国からなる連邦国家だが、

其々独自の行政の下で政治や経済を動かしており、国ごとの特性があるという。

UAEは又、自国民であれば医療費・教育費は無料で、税金も無し。その他にも様

々な恩恵があるというから驚きだ。(UAEの自国民は1割だけで9割は移民)

 

ところが今、レンティア国家と言われた湾岸諸国が「脱石油」を掲げて、新しい

国造りに邁進しているという。それにはドバイの成功が大きく影響していて、サ

ウジアラビアの“未来都市計画”など、大きな構想が次々と発表されている。

※レンティア国家 = 天然資源の輸出収入に依存した経済システム

 

ドバイの場合、採れる石油の量が少なくしかも質が悪かったため、数十年前はとて

も貧しい国だったそうだ。しかしその後、大陸のつなぎ目という利点を生かして大

きく発展していった。下記はその代表的なもの。

 

・ドバイには現在、50か所の多種多様なエコノミックフリーゾーンがあり、世界中

 の大企業が7000社も集まっているゾーンもある。

・国家自らが運用する政府系ファンドがあり、フリーゾーンによって生まれた利益

 を、投資という形で増大させている。

・世界一を誇る高さ828mの高層建築物がある。  等々

 

以下に、本書で印象深かったものの中から3点抜粋。

 

アブダビには、化石燃料を一切使わない世界初のカーボンゼロの街があり、中

 心部には自然の力のみで冷却出来る構造のタワーがある。

◎2023年、これまでいがみ合ってきたイランとサウジアラビアが、中国の仲介で

 和解。これによりイスラエルは孤立化、窮地に。

◎アラブ人はインフラ整備の際は、自分達より立場の弱い国の人を働かせ、しか

 も必要なくなったら容赦なく出身国に送り返す…という側面がある。

 

日本は現在、原油の90%以上を中東地域に依存しているが、中東における日本の

評価は、アメリカに追従している間に急落しているという。またUAEでは、日本

と同じくらい品質が良くて安い韓国製品に、市場を占拠されてしまっているそうだ。

 

著者は最後の章で、日本政府は今後中東とどう関わっていくべきか、又これからの

有望なビジネスの形を具体的に提案している。

 

本書ではその他、中東の歴史、米・中・露など世界との関係、イスラム教について

も詳しく解説されている。