[内容]
ミャンマーの複雑な民族問題と、ロヒンギャへの弾圧、国軍と民主化勢力の闘争
について解説。 副題『民族浄化の真相』
[感想]
著者は “京都大学東南アジア地域研究”研究所准教授
本書はサントリー学芸賞他、幾つかの賞を受賞している。
ミャンマー(旧ビルマ)は、日本の約1.8倍の国土に130以上の少数民族が暮らす多民
族国家で、ビルマ族が約7割を占める。
ビルマは長年英国の植民地だったが、1948年に独立。その時に主導権を握ったのが
ビルマ族で、それに対して他民族からの反発が起きて内戦が続いた。
これだけでもこの国の統治の難しさがうかがえるが、ミャンマーは国民の9割が仏教
徒で、対してロヒンギャ族はイスラム勢力の一つ。このことがロヒンギャへの弾圧
に大きく影響している。
1962年の軍事クーデター以降、軍事政権はロヒンギャ族を不法移民とみなして抑圧
を強めていった。更に1982年の市民憲法で、ロヒンギャを非国民とみなして国籍を
はく奪してしまう。
2011年からミャンマーでは民主化が進み、発言が自由になった。それにより過激
な僧侶がムスリム(イスラム教の信者)排斥を呼びかけるようになり、結果、仏教徒
の間に反イスラム感情が広がり、ムスリムとの間に紛争が頻発するようになった。
2017年に、今の状況を作り出す元凶となる大きな事件が発生する。
ロヒンギャの武装勢力ARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)が、警察・軍関連施設
を襲撃。これに対して国軍は大規模な掃討作戦を実施し、ロヒンギャの集落を焼き
払って住民を無差別に虐殺した。
逃げ延びた人々は隣国バングラデシュへ避難。その数は100万人にも上り、現在
ミャンマーに残る約60万人のロヒンギャも、国から不法滞在扱いされている。
今なお難民帰還が難航している理由として、著者は以下の4つを挙げている。
①国籍問題 ②帰還後の支援への不安
③治安の急速な悪化(今も戦闘が頻繁に起きている)
2017年に虐殺が起きた当時は、国民民主連盟が国政を担っており、アウンサンスー
チー女史が事実上の首相とみなされていた。
しかし、ノーベル平和賞受賞者でもあるスーチー女史は、この事態に積極的に対応
せず、その為に世界中から激しい批判を浴びた。
著者はスーチー女史の発言を「国内の現実的な選択肢を踏まえた穏健なものと理解
できる。」とし、難民問題の解決には、批判ではなく帰還のための環境作りと支援
が必要と訴える。又最終章では、日本が果たすべき役割なども具体的に提示している。
※スーチー女史は、軍事政権によって何度も軟禁状態に置かれており、2021年の
ミャンマー国軍のクーデターにより、現在(2024年)は刑務所に収監中。
本書はミャンマーが現代に至るまでの歴史背景にも多くの頁が割かれており、しっか
り学びたい人にはお勧めの1冊となっている。ちなみに通読の私にはロヒンギャの要
略だけで精一杯。質問されても答えられません^^;。