昔うだるような暑さの中、麻の着物姿で凛と立つ素敵なお婆さんがいて、思わ
ず見とれてしまったことがある。
私も齢をとったらあんな風になりたいと思ったが、現実は着物どころか、家に
居る時はいつもエプロンワンピースでボロ隠し…という体たらく(笑)。
着物ハラスメントという言葉がある。略して“キモハラ”。着物警察とも言う。
街中などで、着物を着ている若い女性にいきなり着付けの悪さなどを指摘した
り、聞こえるような小声で批判する行為のことで、そのせいで着物を着ること
がトラウマなってしまう人もいるとか。
私も若い時に少しだけ着物のマナーを習ったが、その中には「着物にネックレス
やイヤリングは、飲み屋の女性と間違われるから駄目。」なんて、今の人にはビ
ックリされるようなものもあり、昔の方が余程厳しかったように思う。しかし見
知らぬ人に注意されたなんて話は、少なくとも私は聞いたことが無い。
※正式な場でのネックレス・イヤリングは今でも基本NG。
成人式や結婚式などのイベントの場合は、プロに着付けしてもらうことが殆どな
ので問題ないが、キモハラの被害にあうのは、お祭りで浴衣を着ている時や普段
着感覚でカジュアル着物を楽しんでいる時が多いらしい。
キモハラからの指摘内容は、「着付けを間違えてる」「着方がだらしない」「着物
と帯があってない」等々で、いきなり衿を直されて恥ずかしかった…と話す人も。
しかし、実はキモハラする側も「教室で習ったのと違う」などといった、浅い知
識による思い込みがあったりして、そちらの方が余程恥ずかしいという声もある。
例えば衿が左前になっているなど、明らかな間違いに対する指摘は良いが、それ
以外はお節介でしかない。人の好みは様々で、中には好きでわざと着崩してます
なんて人もいるのだから。
ちなみにパリッとした着物姿は、殆ど体を動かさなくても良い場合にだけ保たれ
るもの。昔のお母さん方は、着物姿で掃除・洗濯・炊事をしながら子育てもして
いたので、普段はややゆったりとした着付けになっていて、現代ならまず間違い
なく「だらしない」と言われていたと思う。
よく言われるように、着物も洋服と同じで所詮はただの服。基本や最低限のルー
ルはあるが、正式な場以外の着こなしは自由な筈。若い人のカジュアルな着物姿
は可愛いので、お節介にビビらず好きに楽しんでほしいと思う。