[内容]
祈りが脳にどのように作用するか、実例を挙げながら科学的に解明。
[感想]
表紙の帯に「前向きな心、感謝、人を思う祈りが、脳を活性化し免疫力を高める」
とある。果たして祈りは本当に、祈る人の脳に影響を与えるのか。
本書は文字が大きく振り仮名が多いので、小学生でも高学年の子なら問題なく読
めそうだ。脳内で分泌される物質が色々登場するが「オキシトシン=愛情ホルモン」
といった具合に、その都度短い説明つきなので頭を悩ますこともない。
海馬の解説が面白い。海馬は記憶をつかさどるだけではなく、展望的記憶(未来に
やるべき事・将来行う行動)もコントロールしているそうで、この能力が低いと目
標達成への地道な努力が苦手で、何をするにも意欲が湧かないそうだ。
では、展望的記憶を強化するにはどうしたら良いか。その一つが祈りで、著者は
「心からの良い祈りを続けると『脳内快感物質』が分泌され、脳に良い影響を与
え、心を変え、生き方を良い方向に変える。」と言っている。
逆に人の不幸を願うようなネガティブな祈りは、コルチゾール(ストレス物質) が
分泌され、これが過剰になると海馬が委縮してしまうことも分かっているとか。
つまり「人を呪わば穴二つ」の結果になるということだ。
本書にはこの他、「南無妙法蓮華経」の音韻分析、ランナーズハイ、祈りや瞑想に
よって得られる “世界との一体感” 等、様々な現象について脳科学から見た解説
がなされている。以下はその一部。
・「絶対に病気にならないぞ」と気力がみなぎっている時には、免疫機構が活発に
活動し、感染症にもかかりにくくなる。
・脳細胞を育てるのは、筋肉トレーニングと同じようなもので、適度な刺激と負
荷を与えて、毎日少しずつ鍛えていくのが良い。
・祈りを毎日行っていると惰性になりやすい。
祈りを無意識に行っていては「叶う」という状態からは程遠くなってしまうの
で、祈りの的を定め「意識の上にのぼらせる」ことが大事。
以下に、特に肝に銘じておきたいと思ったことを2つ。
「逆境こそが脳を鍛える。必ず乗り越えて見せると心のファイティングポーズを
とれたら、その瞬間に闘うための神経伝達物質が脳と体内を駆けめぐり、シナ
プスやニューロンが伸びてつながっていく。」
「認知的焦点化理論を用いた研究では、利己的な人はある程度までは効率よく成果
をあげられるが、総合的に見ると幸福感の感じられない損失の多い人生になる。」
※認知的焦点化理論=人が心の奥底で何に焦点を当てているかによって、その人の
運の良し悪しまで決まってくる、という考え方のこと。
著者は本書で語ったこれらの事に対し、最後に「単なる精神論ではなく、脳の仕組
みをきちんと踏まえたうえでの結論です。」と明言している。
全部で126頁しかないので短時間で読み終えられるが、出来れば流し読みではな
く、きちんと心に留めながら読んでほしい。